「うるうの朝顔」水庭れん著
「うるうの朝顔」水庭れん著
母の墓参りに出かけた千晶が、霊園の事務所の軒先で雨宿りをしていると、職員の凪に声をかけられる。離婚後、息子を連れて実家に戻った千晶だが、すぐに母が亡くなり、今は働きながら子育てをしている。千晶が幼いときに両親は離婚をしており、父の顔も覚えていない。思うようにいかない日々に、千晶の心はささくれ立っていた。
次の墓参りの折、雨宿りのお礼にチョコを持参した千晶に、凪は知人から譲り受けたという「うるうの朝顔」と呼ばれる花の種をくれる。その種を植え、花が咲いたとき、その人のなかにあるなんらかの「ズレ」が正され、空回りしていた歯車が再びかみ合うようになるという。(「チョコレートの種-toxin-」)
不思議な青年・凪から種を受け取った人たちの再生を描く連作集。
(講談社 880円)