放送作家・新野新さんを悼む 初めてラジオ番組に呼ばれてかけられた、ありがたい言葉
「覚悟してます」と返すと「ホンマかいな? ホンマに覚悟してんねんやったら立派なことやわ。見向きもされんようにならんよう、忙しいいま、勉強しときや」とありがたい言葉をかけていただきました。
以降、お会いするたびに「書いてるか? 書き続けな書けんようになるから、しんどうても頑張って書きや」と励ましのお言葉をかけてくださり、新野先生がタレント養成所を開校された際には責任講師にお声がけいただきました。「NSCの講師をやっているので、吉本がどういうか確認をとらないとわからないです」と答えると「それやったら大丈夫や、吉本の許可はもろてるさかい面倒見たって」とすでに根回し済みで、以降10年ほど新野先生の下で講師をしたこともありました。
振り返ると、先生の個性的なしゃべり方や引き笑いは覚えていますが、どんな話をしていたかあまり記憶になく……よくよく考えてみると、先生は相手の話を聞いて、豊富な知識の中から合う話題をあてて、相手を光らせていました。「ほう! ほう! それはすごいわ!」と合わせつつ「こういうふうには考えられへんのん?」とさりげなく補足して、ウダ話でさえ面白い話に変えてしまう。根底には自分が放送作家で、裏方だという意識が強かったのかもしれません。鶴瓶さんもそんな新野先生の“引き出す力”で生まれた「作品」のひとつだったのではないでしょうか。