志茂田景樹さんは「要介護5」の車イス生活に…施設は合わず、自宅で前向きな日々

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僕は最後まで楽しく生きたい

 直木賞受賞作「黄色い牙」は、マタギの古い風習を守ろうとする実直な親子の話。このところ、熊が人を襲うニュースが連日報じられている。どう感じているのか。

「『黄色い牙』を読んで、熊との共生について考えてもらえたらいい。いつか、『新・黄色い牙』を書くのもいいね。

「リウマチを発症したり、骨折で車イスになったりしたときは、さすがにマイったと思いました。でも、それも一瞬。クヨクヨしたって始まらない。僕は最後まで楽しく生きたい。それには前を向くしかないんです。こんな状態でも食欲はあるし、楽しく生きている。これまでもテレビに出たり、ファッションショーに出たり、やりたいことをいつも全力でやってきた。もし書きたい小説が未完で終わっても、悔いはありません」

 前向きな姿勢は、介護を担う8歳下の光子夫人には救いだろう。「大変でしょうね」と声をかけても、夫人は「ずっとがんばってくれたから」と笑う。夫婦ともに明るいのだ。現在、夫人と2人暮らし。

「1階に僕と女房、2階は別所帯で、93歳の僕の次姉が住んでいます。僕の母方は長生きの家系でね。4人きょうだいのうち兄は20歳で戦死しましたが、長姉は89歳まで、母は94歳まで生きたんです」

 53歳の長男はカメラマン兼タクシー運転手になり、埼玉県川越市に。49歳の次男・大気さんは武蔵野市議会議員となり、志茂田さん宅から徒歩2、3分の距離に住む。

「頼み事があるとすぐに誰かに来てもらえるので、僕にとってはいい環境。息子は2人とも結婚していても、子どもはいない。孫がいたら僕も何か力になれたかな、と思い残念だけど、もし息子の隠し子が現われたら面白いだろうな、なんて想像して楽しんでいます(笑)」

 15年前に始めたTwitter(現・X)のフォロワーは45万人近い。とくに、若者に熱く支持されている。

「彼らには自分と向き合い、自分を信じ、やると決めたらためらわずにやれ、と伝えたいですね」

(取材・文=中野裕子)

▽志茂田景樹(しもだ・かげき) 1940年3月25日静岡県伊東市生まれ。本名:下田忠男。中央大学法学部卒。76年「やっとこ探偵」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。80年「黄色い牙」で直木賞受賞後はテレビでも活躍した。98年頃から絵本の読み聞かせ活動に注力したが休止中。

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