松本人志は“面白さ”だけで逆転できるのか。「DOWNTOWN+」に見るお笑い界の行く末

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コクハク

「DOWNTOWN+」が配信スタート

 女性関係のトラブルにより活動を休止していたダウンタウン・松本人志さんが約2年ぶりに復帰した。独自の配信サービス「DOWNTOWN+」は登録者数を堅調に伸ばしており、「完全復帰も近い」との見方もある。

 そこで今回は、かつて年間100本以上のライブに出演し、自身もライブ主催者の経験もあるという現役の芸人・帽子田が、松本復帰の可能性とDOWNTOWN+について分析する。

【関連記事】“松本人志ファン”として言わせてください。『DOWNTOWN+』は天才的だった。だが「松本、動きました」はダサかった

ブランクを感じさせない、松本の勢い

 フワちゃんとほぼ時を同じくして、ダウンタウンの松本さんも活動を再開した。ただし、以前のようにテレビの世界に王者として舞い戻ったわけではなく、しばらくは独自の有料プラットフォーム「DOWNTOWN+」のみの活動となる。

 DOWNTOWN+は月額1100円とNetflixのベーシックプランより高値という強気の値段設定だが、11月末時点で登録者数は50万人以上を突破し、スキャンダルや長いブランクを感じさせない勢いを見せている。

 現時点で浜田さんが参加した新コンテンツは配信されていないため、今後「浜ちゃん降臨」が決定すると、さらに登録者数は伸びるだろう。

 DOWNTOWN+では『ガキの使いやあらへんで』などの過去の出演番組のほか、『大喜利GRAND PRIX』、『芯くったら負け! 実のない話トーナメント』などのオリジナルコンテンツも多数配信され、反響も大きかった。僕もすぐに登録してオリジナルコンテンツを視聴したが、予想にたがわず面白かった。

 それもそのはず。面白くない話をし続けたものが優勝する『実のない話トーナメント』では、フットボールアワー・後藤さん、ケンコバさん、とろサーモン・久保田さん、カズレーザーさん、FUJIWARA・藤本さん、ダイアン・ユースケさんなどの実力者が登場。このメンバーを揃えてつまらなくする方が難しいだろう。

面白さは文句なし。だが、SNSでは否定的な声

 松本さんはチェアマン的な立ち位置で企画を仕切っており、ちょっと前まではよく見た絵面だが「懐かしい」と感じてしまった。やはり、テレビでエース級に活躍する芸人を一挙に集めたとき、その中でもカリスマ性がある松本さんがチェアマンとして据えられていると非常に見やすく、面白さがより伝わりやすくなる気がした。

 コンテンツとしては文句なしに面白くて、「流石松っちゃん!」とお笑い大好き少年だった頃の感情を思い出して新鮮だったが、大人になってしまった僕としては違和感を覚えてしまう部分もいくつかあった。

 オープニングで衝撃的だったのは、約2年ぶりに姿を現した松本さんが涙をこらえていたことだ。感動系の番組などで涙ぐむくらいのことはあったが、こんな形で涙を見るなんて想像もしなかった。

 有料配信部分なので詳しくは触れないが、松本さんが起こした女性トラブルとその裁判の顛末を説明する場面もあった。

 松本さん側の釈明としては納得できた部分もあったが、それ故に「なぜ会見を開いて自分の口で説明しなかったんだろう」ということがより強く疑問に残る。意見があり反論があるなら限られた人しかみないプラットフォームで説明するのではなく、第三者の目もある場面で訴えかけた方がよかったのでは、と思ってしまった。(できない理由があったのかもしれないが)

 そしてやはりというか、ダウンタウンファン以外の世間の反応はかなり厳しい。登録者数も伸び、松本さんも勝利宣言をしていたが、SNSでの反応はかなり否定的な意見が多いのだ。

周りの芸人にまで飛び火

 出演芸人をはじめ、松本さん復帰を支持する芸能人もかなり苛烈に叩かれる事態になっている。例えばロッチ・中岡さんが「(DOWNTOWN+に)呼んでもらって 笑ってもらって 年額プラン分の料金を取り返したいです!」とポストしたところ、批判が殺到。

「被害者の女性がどう思うか? コンプラ的にどうか? を考えずにこの投稿するのが怖い」「性加害した人をどうやって笑えばいいの?」「ロッチは性加害を容認するのか」など、辛辣なコメント欄となっている。

松本人志=「性加害擁護」という風潮

 さらに叩かれているのが、Kis-My-Ft2の二階堂さんだ。「DOWNTOWN+松本さんが!いらっしゃる!動いている!話している!感動です!62歳の再デビュー!」とSNS上で大歓喜していたのだが、コメント欄は中岡さんよりはるかに荒れている。

「女性ファンに支えられている仕事のくせによく言えるな」「事務所はなぜ削除しないの?」などをはじめ、二階堂さんに対して人格否定するポストも多い。

 今の芸能界では、松本さんに触れようものなら「性加害を容認している」とのレッテルを貼られてしまう危険性すらあるのだ。

 また、「自分の好きな芸人には出てほしくない」というファンの運動も起こっており、特に若手芸人は喜んで出られないような空気になってしまっている。少し前なら「松っちゃんと共演できたら芸人辞めてもいい」という人間がゴロゴロいる世界だったのに、無常を感じてしまう。

『酒のつまみ』で千鳥大悟さんが松本さんのコスプレをしたことでトラブルになり、降板してしまうという事件もあった。松本さんの地上波はもう難しいのだろうか。

お笑い界の行く末はどうなるか

 今後はDOWNTOWN+がコンテンツの面白さだけで、この厳しい逆風をひっくり返せるのかが注目すべきポイントだ。

 もし松本さんが「面白さ」だけで今の厳しい状況を変えられるなら、失墜しかけた王者の座は揺るがないものになると思う。

 だが、変えられないのであれば、お笑い界の在り方も大きく変わっていくだろう。行く末を見守りたい。

(帽子田/芸人、ライター)

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