(3)医師は体だけでなく心を癒やすのが仕事…患者の背景を聞く
色街で働き、性感染症を患う女性はさまざまな背景を持っています。「遊ぶ金が欲しい」「お気に入りのホストをナンバーワンにしたい」「シングルマザーで子供を養うため」「留学費用を貯めたい」「働かない旦那を食べさせるため」……といった具合です。なかには風俗街をテーマにした小説を書くためにソープ嬢となった野心家の若い女性もいました。
東北から来た女性は、結婚したばかりの夫を東日本大震災で亡くしていました。津波にのみ込まれたそうです。残されたのは生まれたばかりの赤ちゃんと、おじいさん、おばあさん。被災したこの家族を養うため、ひとりで色街に来て風俗嬢として働き、仕送りをしていました。
私は女性たちのこうした事情をストレートに聞きます。いい診療をするには患者さんの背景を知ることも重要だからです。病気になった人は体だけでなく心にも傷を負っています。私が診察で女性の背景やなぜ病気になったのか、その経緯を詳しく聞くのは、そのことによって心を癒やすためでもあります。それこそが医師の本来の仕事だと信じているからです。
アジアから来た女性の中には女性自身が未発達な場合があります。当初は人種差や個人差なのだろうと思いましたが、話を聞くうちに成長期の栄養不足が原因だろうと考えるようになりました。物心がついた頃から貧困が続いていたことを知ったからです。


















