著者のコラム一覧
尾上泰彦「プライベートケアクリニック東京」院長

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

(3)医師は体だけでなく心を癒やすのが仕事…患者の背景を聞く

公開日: 更新日:

 色街で働き、性感染症を患う女性はさまざまな背景を持っています。「遊ぶ金が欲しい」「お気に入りのホストをナンバーワンにしたい」「シングルマザーで子供を養うため」「留学費用を貯めたい」「働かない旦那を食べさせるため」……といった具合です。なかには風俗街をテーマにした小説を書くためにソープ嬢となった野心家の若い女性もいました。

 東北から来た女性は、結婚したばかりの夫を東日本大震災で亡くしていました。津波にのみ込まれたそうです。残されたのは生まれたばかりの赤ちゃんと、おじいさん、おばあさん。被災したこの家族を養うため、ひとりで色街に来て風俗嬢として働き、仕送りをしていました。

 私は女性たちのこうした事情をストレートに聞きます。いい診療をするには患者さんの背景を知ることも重要だからです。病気になった人は体だけでなく心にも傷を負っています。私が診察で女性の背景やなぜ病気になったのか、その経緯を詳しく聞くのは、そのことによって心を癒やすためでもあります。それこそが医師の本来の仕事だと信じているからです。

 アジアから来た女性の中には女性自身が未発達な場合があります。当初は人種差や個人差なのだろうと思いましたが、話を聞くうちに成長期の栄養不足が原因だろうと考えるようになりました。物心がついた頃から貧困が続いていたことを知ったからです。

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