『抱きしめたい』は高嶋ちさ子のお父さんが超訳した邦題の最高傑作
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アルバム『パスト・マスターズvol.1』(1988年3月7日発売)②
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■『抱きしめたい』
アルバム『ヘルプ!』がイギリスで発売された1965年の夏まで進んだ本連載だが、時計の針を少し巻き戻して、63年の秋へ。ついにあの『抱きしめたい』である。
日本でのデビューシングルであり、アメリカでも大手キャピトルレーベルからの実質的デビューシングルとなった。つまり世界的ビートルズ人気爆発の導火線となった一曲だ。
まずはタイトル。これぞ最高傑作邦題といっていいだろう。「アイ・ウォント・トゥ・ホールド・ユア・ハンド=手を握りたい」が「抱きしめたい」なのだから、翻訳というか意訳、さらには超訳だ。
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この超訳がなければ、あのトレンディードラマも、あのミスチルの曲もなかった。ちなみに名付け親は、東芝音楽工業(当時)の高嶋弘之、というか高嶋ちさ子のお父さん。
初の4トラック録音ということで(それまでのモコモコ音質よりは)クリアなサウンドになったことも、特大ヒットに加勢したことだろう。
しかしやはり楽曲の力が大きい。次回触れる『フロム・ミー・トゥ・ユー』(63年)をさらにブラッシュアップしたようなポップチューン(両曲とも専門用語でいう「4度上」の部分転調がある)。こりゃ売れるわぁと思わせる。
特にポイントになったのはイントロの最初の「♪ッジャジャジャーン」ではなかったか。冒頭に8分休符「♪ッ」が入るのだが、この仕掛けが当時の日本人には分からなかったもよう。
かまやつひろしは自著『ムッシュ!』(日経BP社)で自分のいたザ・スパイダースはこの仕掛けを理解していて、逆に気付いていない他のバンドを「やってる、やってる田舎者が」とバカにしたと書いている。
この話にご興味を持った方は、ぜひハナ肇とクレイジーキャッツ『遺憾に存じます』(65年)のイントロを聴いていただきたい。休符付きの「♪ッジャジャジャーン」ではなく、休符なしの「♪ジャジャジャーン」になっていて、何ともモッチャリしているのだ(わざとそうしたと思われるが)──。というわけで整いました。税額控除と『抱きしめたい』のイントロはキューフ(給付・休符)付きでお願いしたい。すずっちです!
日本版ジャケットはオレンジ色基調。「抱きしめたい」とB面の「こいつ」(ジス・ボーイ)というタイトルの下には、こう書かれている。深読みすれば、演奏やリードボーカルより、複数のメンバーがフォルテシモで一気に歌うことの衝撃が上回った結果ではないか。──「(コーラス)ビートルズ」
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