綾瀬はるか&千鳥・大悟がW主演「箱の中の羊」亡き息子そっくりのヒューマノイドを前に夫婦は…

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「箱の中の羊」

 今年はカンヌ映画祭のコンペ部門エントリーの全22作のうち3作が日本人監督の作品というので話題だそうだ。そのひとつが今月末封切りの「箱の中の羊」。いまやカンヌの常連となった是枝裕和監督の最新作だ。

 時事的な関心をプロットに組み込む彼の今回の素材は生成AI。2022年末公開のチャットGPTが2カ月で登録者1億人を突破して以来、次々登場する対話型生成AIにのめりこみ、依存する人が急増しているのは周知だろう。

 映画では7歳のひとり息子を亡くした夫婦が最新鋭の生成AIを搭載した息子そっくりのヒューマノイドを前に喜び、疑い、ゆらぎ、怒り、悲しむ姿が描かれる。妻役は綾瀬はるか、夫役が千鳥の大悟。なんだか見た目の釣り合いの悪いふたりだが、「そして父になる」の福山雅治など、微妙に役柄にそぐわない配役は是枝作品の常。むしろ生成AIへの多様な反応を夫婦それぞれに託すかたちで、やや不自然な設定を観客が自然に受け止められるよう持っていく腕がこの人の持ち味だ。現に物語の展開もしだいにAI問題から離れ、現代的なグリーフケア(悲嘆の癒やし)へと焦点を移してゆくのである。

 心を持った機械という主題は古来、文学に繰り返し描かれてきた。アイザック・アシモフ、フィリップ・K・ディックらのSFのほか泉鏡花「活人形」や「ピノキオ」など人形が心を持つ話も世界に数多い。最近ではカズオ・イシグロ「クララとお日さま」(早川書房)がまさにAIロボットの一人称物語だ。

 しかし何といっても忘れがたいのは鉄腕アトム。文庫版の手塚治虫全集「鉄腕アトム 第7巻」(講談社 935円)に所収の「地上最大のロボットの巻」。心を持ったロボット同士が人間に命じられ、嫌々ながら命を懸けた果たし合いを繰り返す。AIの反逆話が多い昨今とは裏腹の寓話なのが懐かしい。

〈生井英考〉

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