埼玉大・高端准教授が警鐘「自助、共助」を強調する危うさ
安倍前首相の後継として菅義偉・前官房長官が自民党総裁に選出され、16日に召集された臨時国会で第99代首相に就いた。菅首相が就任会見で訴えたのが「私が目指す社会像は自助、共助、公助、そして絆だ」というスローガンだ。この言葉が広く知られるきっかけとなったのは、95年の阪神・淡路大震災だったといわれる。災害時にはまず、自分で行動し、そのための備えを怠らないこと(自助)、そして地域などで助け合い(共助)、それを行政機関が支援する(公助)――と解されてきたのだが、これは国家の在り方として果たして望ましい方向なのか。埼玉大学大学院の高端正幸准教授に聞いた。
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――菅首相は総裁選中から「まず自分で出来ることはまず自分でやる。自分で出来なくなったら、家族とか地域で支えてもらう。それでもダメであれば必ず国が責任を持って守ってくれる。そうした信頼のある国づくりというものを行なっていきたい」と繰り返し訴えていましたが、どのように感じましたか。
個人や家族でまず何とかしろ、それが無理なら近隣や助け合いで何とかしろ、それでダメなら初めて公助だ――という言説は、自民党の伝統的な考え方、姿勢として聞き飽きるほど叫ばれてきました。それを改めて正面に据えて国家像を語るというのは、何とも工夫のないスローガンだと。日本の将来を見据えたビジョン性が全く感じられなかった、というのが率直な感想です。実際の社会が、人間が人間らしく生きていくための条件という意味で、一体どうなっているのかということに対する洞察力こそが、一国のリーダーには不可欠ですが、残念ながらそれが伝わってきませんでした。