夏樹久視
著者のコラム一覧
夏樹久視作家

1947年東京生まれ。週刊誌アンカー、紀行作家、料理評論家などを経て推理作家に。別名で執筆の多くの作品が話題を呼びTVドラマ化。母親の認知症を機に、65歳でヘルパー2級の資格を取得、約5年間、デイサービスでの就業を経験する。紀行文、料理本、ミステリーなど著書多数。日本推理作家協会員。

泣きたくなる! 少し前まで「先生」と呼ばれていたのに…

公開日: 更新日:

 ヘルパーの給料は安い。時給1000円前後で、訪問ヘルパーの最高クラスでも2000円程度だ。「特別な能力を必要とせず、年齢を問わず働けるから」などと言われる。しかし、経験者の僕には異論がある。それなりの技術と体力が必要だ。例えば、ベッドに横になっている肥満体のおばあちゃんを抱き起こして食事させ、トイレに移動して排泄させてベッドに戻す……。こんな仕事は技術も体力も必要だ。

 僕は65歳の時、ドライバー兼ヘルパーとして、都内のデイサービスに見習のパートとして採用された。時給は950円。見習い期間中は何でもやらされる。出勤して朝礼が終わると、まずはテーブルと椅子の準備。その日の出席者に合わせて、並び替え、消毒液で拭く。続いてお茶の用意。

「お茶を頼みます」

 リーダー役に指示されて、急須と茶筒を前にしたが、お茶の適量がわからない。「早くして」「分量は……」とやりとりをしていると、5人の高齢者が到着して席に座る。お茶を配ろうとすると、怒られた。

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