小倉健一
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小倉健一イトモス研究所所長

1979年生まれ。京都大学経済学部卒。国会議員秘書からプレジデント社入社。プレジデント編集長を経て2021年7月に独立。 Twitter:@ogurapunk CONTACT:https://k-ogura.jp/contact/

「安倍カラー鮮明」「菅前政権は全否定」タカ派へと変貌を遂げた岸田首相

公開日: 更新日:

 高水準の内閣支持率をキープする岸田文雄首相が、「タカ派」ぶりを見せている。もともと「ハト派」の代表格とされてきた首相は、伝統的にリベラル色の濃い自民党派閥「宏池会」の第9代会長を務める。だが、寄り添うのは保守派を代表する安倍晋三元首相だ。「敵基地攻撃能力」の保有検討を表明するなど、戦後日本政治の歩みからの転換を目指す名門派閥のプリンス。その変節の理由は──。

 ◇  ◇  ◇

「いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、スピード感をもって防衛力を抜本的に強化していきます」

 昨年12月の所信表明演説で、岸田氏は日本を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増しているとして、防衛力強化の必要性を強調した。

 相手国の領域内にある基地などを攻撃する「敵基地攻撃」が議論になったことは、これまでもある。だが、首相として、敵基地攻撃能力の保有検討の必要性を“所信表明演説”で明言したのは、岸田氏が初めてだ。今年1月の施政方針演説でも同様に表明した。2月18日の衆院予算委員会では、「重要なことはミサイル技術が急速なスピードで変化する現状において国民の命や暮らしを守るために何が求められているかだ」と述べている。

■“被爆地出身”宰相の変節に疑問の声

 保守政治家を代表する安倍氏であれば、同じ言葉を発しても不思議には受け止められないかもしれない。実際、安倍氏は首相在任時に敵基地攻撃能力の保有に意欲を示したことがある。だが、岸田氏は、憲法9条の平和主義を大切にしてきた名門派閥のトップである。4年7カ月もの外相経験で外交の要諦に「相手の話を聞く」ことをあげ、被爆地出身の宰相として戦争の悲惨さを語る政治家の変節に対しては、「なぜリベラル派の岸田氏が……」と首をかしげる向きは少なくない。

 その理由をある政府関係者が語る。

岸田政権の外交・安保分野を事実上牽引しているのは、安倍元首相です。外務省や防衛省で積み上げているというよりも、自民党の部会・調査会で議論されたことがそのまま通ることが多い。岸田首相は安倍氏の顔色ばかり気にしていますよ」

党内最大派閥の安倍派が必要

 では、なぜ岸田氏は安倍元首相の話にだけ「聞く力」と「実行力」を発揮するのか。その理由を全国紙政治部記者が解説する。

「岸田政権は首相が率いる岸田派、麻生太郎党副総裁の麻生派、茂木敏充党幹事長の茂木派という『主流3派』が支えていますが、それだけでは自民党内で安定的に多数派を形成できません。どうしても党内最大派閥の安倍派をひきつけておく必要がある。高市早苗政調会長や、外交部会などには安倍氏に近い保守派も多く、首相が苦手とする外交・安保分野で党内から批判され続けていれば政権が弱体化すると判断し、安倍元首相に近づいているのでしょう」

 麻生副総裁は、岸田氏について「『大丈夫か、なんか頼りない顔じゃな』とみんな言っていたじゃない。やらしてみりゃ、そこそこやる」と評したが、その裏には長期政権を狙う首相の打算も透けて見える。

「トップとしてやりたいことがない首相」「無色透明でグランドデザインがない」とも揶揄される岸田氏。菅前政権の肝入りだったデジタル庁も崩壊の一途だが、放っておくのみ。政府が年末までに改定する国家安全保障戦略など外交・安全保障政策に関する3文書は、安倍政権の時よりも「安倍カラー」に染まっている可能性がある。 

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