知床遊覧船沈没事故 斜里町長の苦悩とこれから…「町長も同罪だとも言われました」
馬場隆氏(71歳/斜里町長)
4月23日午後1時13分ごろ、北海道斜里町の知床半島沖で、知床遊覧船が運営する観光船「カズワン(KAZU I)」(乗客24人・乗員2人)が沈没した。当初、同社の桂田社長が“雲隠れ”する中、マスコミ対応したのが馬場町長だ。
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事故当日、カズワンからの無線連絡を受けた別の運航会社が海上保安庁に通報し、関係機関がすぐ捜索救出活動に向かった。馬場町長は自身が漁業者で救難所の所員だったこともあり、「船は簡単に沈まないはずなのになぜだ、と思いながらウトロ漁港へ向かった」と振り返る。
斜里町には強風注意報が出ており、海上は最大風速15メートル、海水温は4~5度。第1管区海上保安本部(小樽)のヘリコプターが現場に到着し、捜索救出活動を開始できたのは午後4時30分ごろだった。
同時刻に国土交通省は事故対策本部を設置。17時12分、斜里町漁村センター内に現地対策本部が設置された。ヘリでの捜索は午後6時30分までが限界で、日没以降は船舶での捜索になった。そうなると漁業者の協力が欠かせない。
「今までの仲間たちに一刻でも早く見つけてほしいと頼み込みました。救助シミュレーションを立てて、職員とともに関係機関との連携や場所の提供など徹夜で作業。乗船名簿には乗客本人の携帯電話しか記入されておらず、家族への連絡は北海道警察が行いました」
翌朝5時ごろ、遭難者発見の一報が入った。遭難者をウトロヘリポートで受けて救急搬送したが、発見者11人全員の死亡が確認された。
斉藤国交相は現地で家族と対面し、知床遊覧船への特別監査を開始した。桂田社長からの聞き取りや関係書類の確認などで、海上運送法の違反事項が多数確認された。