「子どものうつ」原因は首…“スマホ漬け”の生活も弊害、最新調査で中等度以上の抗うつ傾向は13%増加
このゴールデンウイーク(GW)はコロナ禍の制限が解除され、あちこちがにぎわっていた。仕事を忘れてGWを満喫した人は少なくないだろう。しかし、気持ちが晴れない人もいる。意外にも子どもだ。国立成育医療研究センターは、中等度以上の抑うつ傾向を示す子どもが1割を超えることを発表している。
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国立成育医療研究センターは、コロナ禍が拡大したことを受け、それが子どもに与えた影響を調査。2020年12月、21年12月、22年10月の3回に小5~高1の延べ1万680人に「気分が落ち込む」「物事に対してほとんど興味がない」「疲れた感じがする」「自分はダメな人間または失敗者だと感じる」など9項目について質問。国際的な指標を用いて思春期の子どもの抑うつ傾向を分析した。有効回答率はそれぞれ5~6割ほどで、最新の結果が先月25日に公表された。
その結果、中等度以上の抑うつ傾向を示す子どもの割合は、20年6%、21年11%、22年13%と増加している。保護者では全体的に抑うつ傾向が改善しているだけに対照的だ。コロナ禍が一段落して、大人はその不安感やつらさを乗り越えたのかもしれないが、一部の子どもは不安の解消に時間がかかっていることが見て取れる。
「コロナ禍がもたらした生活の変化は、スマホやタブレット、パソコンなどITツールが、一層勉強や仕事に結びついたことです。その影響で子どもが“スマホ漬け”になると、自律神経が障害され、抑うつ状態になりやすい」
こう言うのは、東京脳神経センター理事長の松井孝嘉氏だ。
コロナ禍が始まったタイミングで、文科省は21年度からGIGAスクール構想をスタート。小学生に1人1台タブレット端末が配布され、高校では22年度からデジタルリテラシーを体系的に学ぶ情報が必修化された。
■スマホやPCでうつむく姿勢がリスク
ITツールは今や学校でも必要不可欠。学校の授業を終え、塾に通う途中や自宅でゲームに熱中すれば“スマホ漬け”になる子どもが相次ぐのも当然か。それが自律神経を狂わせ、抑うつ状態に陥れるとはどういうことなのか。改善策を含めて松井氏に聞いた。
「頭部の重さは大体6キロでボウリングのボールと同じくらいです。真っすぐの正しい姿勢なら問題ありませんが、スマホやタブレット、パソコンなどを使っているときはうつむき姿勢になりやすく、スマホやゲームなど端末が小さいほどその傾向が強い。そうすると、頭の重さはすべて首の筋肉で支えることになります。首への負荷は、正しい姿勢のときの3~4倍に上り、首の筋肉が凝る。子どもは筋肉の発達が十分でなく、なおさらです。毎日のように“スマホ漬け”が続くことで、首の筋肉の凝りが慢性化。それで筋肉の中を通る自律神経が障害されます。抑うつ傾向は、その症状のひとつです」
自律神経は、アクセルを踏んで頑張るモードのときに働く交感神経と、ブレーキをかけてリラックス状態で働く副交感神経からなる。そのうち悪影響を強く受けるのは副交感神経だという。
「交感神経と副交感神経がバランスよく働いてこそ健康でいられるのですが、“スマホ漬け”で首の筋肉の凝りが慢性化すると、副交感神経が働かなくなります。アクセルを踏みっ放しで走り続ければ肉体的にも精神的にも疲れて当然です。こうなった子どもは、頭痛やめまい、自律神経失調症を訴えるようになります」