「この子だけ捨てられていてかわいそう」と病院に…果たしてそれは動物愛護でしょうか
各地の動物病院には、ワンちゃんやネコちゃんの里親を募集する掲示があるかもしれません。当院にもいま、乳飲み子のネコちゃんがいます。そこで今回は、子猫の保護について。
当院の患者さんではない方が、子猫を拾って世話に困って来院されると、多くはこう言います。
「この子だけ捨てられていてかわいそうで」
袋や箱に子猫が1匹だけ入っていると、“捨て猫”のように見えるかもしれません。その可能性もゼロではありませんが、多くは違います。
■母猫による移動の途中だったかも
野良ちゃんの母猫は何匹かで集団を組み、繁殖期に出産すると、子育てで共同作業をすることが珍しくありません。たとえば、ある母猫の母乳の出が悪いと、別の母猫に哺乳してもらったり、何らかの事情で母猫が食餌を用意できないと、また別の母猫が運んできたり……。
そんなコミュニティーにカラスやハクビシンなど外敵のほか、発情したオス猫が近づいてくると、母猫は乳飲み子を安全なところに運び出すことがあります。順番に口にくわえて1匹ずつ。その場合、残された子たちは、母猫が用意した袋や箱に入っていることが多く、1匹だと“捨てられた”ように見えるかもしれませんが、実態は違うでしょう。