「釣りバカ日誌」の漫画家・北見けんいち氏は大の野球好き 大谷翔平、水島新司、ドカベン…大いに語った

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北見けんいち(漫画家)

 国民的人気マンガ「釣りバカ日誌」は1979年に「ビッグコミックオリジナル」で連載が始まり、今なお継続。先月発売された最新のコミックは115巻だ。その長寿作で作画を担当。大の野球好きで、連載の最初のページには日記風の文章で野球への思いがつづられる。そこに数多く登場するのが、来週二刀流でキャンプインするドジャースの大谷翔平だ。昭和の漫画家は、令和のスーパースターを、これからの野球漫画をどう描くか。その思いをたっぷり聞いた。

■「漫画超えの50-50には跳び上がったね」

 ──進化を続ける大谷選手は昨年、新天地ドジャースで大ブレークしました。中でも特に注目されたのが本塁打と盗塁で「50-50」を達成した9月19日のマーリンズ戦。SNSでは「漫画超え」と盛り上がりました。

 2年前のWBC決勝の最終回、大谷がスライダーでトラウトを三振に仕留めたときに跳び上がって喜んだのと同じくらいすごかった。1打席目の二塁打からあっさりと三盗で50個目の盗塁を成功すると4打席目の2ランで本塁打の50に王手となる49号。並のスターなら、ここで止まるし、週刊漫画なら1カ月は引っ張るところだよね。それなのに、3連発して結局、6打数6安打3本塁打10打点2盗塁。漫画でこんなシーンを描こうとしても、編集者に止められちゃうよ。ホント、彼はすごい。紛れもなく「漫画超え」。このときも跳び上がったね。

 ──日本のプロ野球がメジャーへの登竜門のようになりつつありますが、桐朋高校の森井翔太郎内野手は日本をパスしてアスレチックスとマイナー契約しました。ほかのスポーツでも、日本人が強豪国のトップチームの主力になっていますから、スター選手を主人公に据える漫画は難しいのでしょうか。

 記録を追うという設定ではそうかもしれない。大谷は今年、二刀流で復帰するでしょう。打撃の援護に恵まれなかったエンゼルスに対し、ドジャースは打線が強力。エンゼルス時代の15勝を上回る20勝もありうる。去年のサイ・ヤング賞がア・リーグ、ナ・リーグともに18勝だから、そうするとサイ・ヤング賞もあるよね。去年は打撃3部門で2冠。打っては三冠王に王手、投げてはサイ・ヤング賞なんて、これも漫画の設定ではないよなぁ。

 ──大谷選手のキャラクター、性格はいかがですか?

 一見、マジメそうだけど、チームでは冗談を言ったりとおちゃめらしいよね。外から見えてくるストイックさとは、違う部分があると思う。それに周りを巻き込んで奮い立たせる力。あれは、野球漫画には欠かせないと思う、うん。

 ──2023年のWBCの決勝に向かう前のロッカールームで大谷選手が「憧れるのをやめましょう」とメンバーに語って、侍ジャパンの魂に火をつけました。あのシーンに象徴されますね。

 そうそう。勝負への真剣さがチームに伝わるところがいいし、その前向きさは練習にも表れていると思う。

■「『巨人の星』を現代風に置き換えた練習なのでは?」

 ──公開されたトレーニング風景では、腹筋を鍛えるときに25キロの重りをつけたり、ダッシュするときは装置からつながる紐を腰に巻いてブレーキをかけさせたりしてより負荷を強めています。その紐が切れたニュースには驚きました。

 大谷君はサラッと何ごともなくやってのけるから当たり前の練習かもしれない。でも、「巨人の星」で描かれたスポ根的なことを現代風に置き換えた練習なんじゃないかなぁ。それがスポ根に見えないのは、彼の身体能力がズバぬけているからでしょう。もう1つは、トレーニング理論やトレーニング解析の先進国アメリカだから、スポ根的な練習の一つ一つに「どこの筋肉を鍛える」「スピードをつける」というような理屈が必ずあることだと思う。そこが「巨人の星」の星飛雄馬とは決定的に違うけど、トップ選手ほど呆れるような練習を見えないところでしているんだろうね。その証拠に、大谷君の体は日本ハム時代よりエンゼルス時代、エンゼルス時代よりドジャースのいまの方が確実に大きくなってるでしょう。

 ──日本ハム時代だった2015年の大谷選手は86キロでしたが、現在は16キロ増の102キロ程度といわれます。日本ハム時代のチームメートは昨年、その変貌ぶりについて「胸板と肩回りが違う。『(ノースリーブ姿だと)肩にメロンが入っている』と思った」と表現していました。

 そうだよね。あの体格の変化はすごいもん。細身の佐々木(朗希)君もドジャースへの移籍でガッチリした体格に生まれ変わるよ。それくらいアメリカの戦略に基づくトレーニング理論、さらにその先にある実戦での戦術はスゴイということじゃないかな。そこはすごく興味があるし、見てみたい。

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