早稲田「早苗」雀荘から喫茶店へ変化したマスターの遊び場
早稲田大学のOB、OGにとって、南門前の「早苗」は雀荘という認識だろうが、今は自家焙煎のコーヒー豆も販売する喫茶店である。
■雀荘から喫茶店へ
マスターの宇田川正明さんの親戚が戦後間もなく、付近で喫茶店「早苗」を開いた。そこに宇田川さんの父親と母親が雀荘「早苗」を併設。雀荘は1950年から現在の場所に移った。
「その雀荘が喫茶店に衣替えしたということは、まあ、言えば先祖返りしたということです」
宇田川さんはこの場所で生まれ育ち、目の前にある早稲田大学を卒業、博報堂に入社した。
「お袋は代打ちもしたから『早苗のおばちゃん』と学生に親しまれてね。僕は博報堂の入社面接を終えて部屋を出ようとしたら、面接官に『おばちゃんは元気?』と言われてびっくりした。面接官はお客さんだったんですね。履歴書を見て、早苗の息子だって分かったみたい」
宇田川さんが雀荘「早苗」の2階はそのままに1階を喫茶店にして再スタートしたのは2016年3月。56歳の時だった。
「定年まで働く選択肢もあったけれど、周囲に定年後ほどなくして亡くなる人が多くてね。それならば、早く会社を辞めてゆったりとした生活を送ろうと思ったんですよ」
しかし、足元の麻雀人口は減少。喫茶店の営業時間が終了し、23時まで麻雀屋を開けていても来客が1組だけという日がしばしばあった。
「学生相手だから利用料金は1時間120円。僕の時給は480円なわけです。これは割に合わないと思い、今年2月、2階も喫茶店にしました」