ソフトバンクGに株式非公開化が浮上 孫氏投資戦略の布石か
ソフトバンクグループ(SBG)は、傘下の英半導体設計大手アームについて、米半導体大手エヌビディアへの売却で合意した。売却額は最大400億ドル(約4・2兆円)。IT事業戦略の中核企業を手放し、膨らむ手元資金で次の一手を模索。ただ、新型コロナウイルスの影響で事業環境は激変しており、金融市場ではSBGが潤沢な資金で株式非公開化を検討するとの観測が出てきた。
SBGは10兆円規模を運用する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」が低迷しており、今年に入り負債圧縮と自社株買いに向けた資産売却を加速させた。8月末時点で6兆円規模の調達にめどを付けており、今回アーム売却の対価として取得するエヌビディア株式を除いても、最大2兆円規模の現金が上積みされる見通しだ。
しかし、新型コロナの終息は見通せず、米国と中国の経済分離も加速する中、中国・字節跳動(バイトダンス)などSVF既存投資企業の先行きにも不透明感が漂う。
SBGは今年半ばごろから、米ハイテク上場株の取得などに向かったが、株式市場から十分な評価を得られていない。株式評価額が保有資産(時価)の半値程度にとどまっており、英メディアなどは「SBGが経営陣による自社買収(MBO)を検討している」と報じた。
孫正義会長兼社長(写真)にとって株式を非公開化すれば、市場の短期評価に影響されない思い切った投資戦略が可能となるだけに、「一連の資産売却はその布石」(投資銀行幹部)との見方も根強い。