“横浜再開発トリオ”南場氏「経団連副会長」が示唆するもの

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 日本経済団体連合会(経団連)の新任の副会長にIT大手ディー・エヌ・エー(DeNA)の南場智子会長(58)が起用される方針だ。副会長に女性が就任するのは初めてのこと。3月の会長・副会長会議で内定し、6月の定時総会を経て就任する見通しだという。現在の副会長は18人。

 南場氏は津田塾大卒業後、米コンサルタント会社のマッキンゼーに入社。「マッキンゼー日本支社長だった大前研一の一番の弟子を自認している」(横浜市関係者)という。

 1999年には携帯向けポータルサイトを運営するDeNAを創業。2015年には横浜DeNAベイスターズのオーナーに就任。こちらも日本のプロ野球で初めとなる女性オーナーであった。

 そもそも日本の企業では女性社長が少ないため南場氏がことさら話題になるのだろうが、DeNAはIT企業といっても主力事業はスマホゲーム。楽天やサイバーエージェントのいる新経済連盟と違い、建設、商社、銀行など伝統的な企業が多い経団連の中では異色。南場氏就任の背景に政治との近い距離感が影響しているのかと勘ぐりたくもなる。

 実際、南部氏は菅総理と近い。南場氏は竹中平蔵パソナ会長など菅総理のブレーンが並ぶ成長戦略会議のメンバー。DeNAの本社は渋谷だが、関連会社のDeNAベイスターズや横浜スタジアムは横浜市の関内エリアが本拠地だ。横浜は菅義偉総理の選挙区もある地元だ。今年元旦にはテレビ神奈川の「報道特別番組 菅義偉総理新春に語る」で菅総理と新春対談をし、菅総理から親しげにエールを送られている。

 この対談で南場氏は、「日本の大企業は新卒一括採用をして40年間ずっと同じ終身雇用を前提としているところが多くて、同じ組織でずっと輝き続けることが本当に可能なのか。その40年間同じ組織でイノベーションが可能なのかといえばムリがある。それが日本経済の生産性の足を引っ張っているものだと思うんです。もっともっといろんな人材が動く。特にリーダーシップが動くことが重要で、そのためには兼業副業というのが重要で、特に副業というのは転職に向けた現実的な第一歩になるわけで、企業もぜひ社員に対して副業を解禁し、かつ副業者をもっと採用するべきことを推進すべきだと思うんですね」と意見を述べている。

 一見すると正論だが、南場氏が批判する象徴のような存在が経団連と自民党である。その両者へ南場氏が距離を縮めるわけは知る由もないが、財界への自身の売り込みだとすれば鼻白む。竹中平蔵氏の女性版にならないことを期待したい。 

■球場の買収と改修に巨額投資

 目下、横浜市(林文子市長・74)では菅政権とともにカジノ・IR誘致による山下ふ頭エリアの再開発を推進しており、市民から大ブーイングが起きている。”ハマのドン”こと藤木幸夫氏ら港湾業関係企業も反対しているが、地元経済界はおおむねカジノ賛成という状況だ。その論争の裏で目立たないが、関内エリアでは横浜市とDeNAが中心となって再開発構想が進んでいる。菅総理、林市長、南場氏は新自由主義的な「横浜再開発トリオ」ともいえる関係であり、勢いをつけている。

 官庁街の関内エリアには三井不動産、東急電鉄、京浜急行も参画するスポーツタウン構想という再開発計画が起きており、その地理的な意味も含めて中心にいるのが横浜スタジアムだ。横浜スタジムそのものの所有者は横浜市だが、経営主体はDeNAの連結子会社(孫会社)の株式会社横浜スタジアム。

 2015年、林文子市政下でDeNAベイスターズが100億規模のTOB(株式公開買い付け)要して、横浜スタジアム社の株を76.87%所有することになった(2019年現在)。横浜市は5.75%保有する第2位の大株主。球団と球場を一体化しないと効果的な経営はできないというのはもっともだったが、ヘソになる球場を所有していなければ関内エリアの再開発もグリップできない。

「横浜スタジアムのDeNA買収も南場会長と林市長でやりました。2人は親しいどころではない関係です」と、地元建設業関係者は話す。林横浜市政と南場DeNAは二人三脚で再開発を進めてきている。ボールパーク構想はいつの間にか横浜市と連携するスポーツタウン構想に拡大している。

85億円をかけて横浜スタジアムを増築改修

 球場改修も政治日程に歩調を合わせていた。東京五輪である。

 国立競技場が所在する明治神宮外苑も、2020年東京五輪をテコに再開発できた。そもそも明治神宮外苑は一般市民の寄付や勤労奉仕により造営された公益性の高い土地。そのため、ゼネコンらが営利目的で再開発することができなかったが、東京五輪という大義名分を引っ張ってきたことで再開発が実現した。横浜スタジアムもそもそもは市民株主の資金を原資に作られた球場。過半数を占める大株主は存在しなかったが、市民株主らから買い取ることでDeNAが3分の2以上を保有する安定株主になった。そして東京五輪では野球とソフトボールの会場になっており、2020年に向けて85億円を注ぎ込んで増築改修が実施された。

 しかし2月の竣工直後に新型コロナウイルス感染症が感染拡大したため東京五輪は延期。プロ野球も無観客試合を強いられることになった。今後の観客動員ビジネスに赤信号が灯った。

 そのようななか、横浜スタジアムでは昨年10月末、神奈川県、横浜市、DeNAらがコロナ対策の入場規制緩和実証実験を3日間実施した。11月半ばのバッハIOC会長来日に合わせるかのようなタイミングだった。実際、菅総理も横浜スタジアムでの実証実験を引き合いに出して、バッハ会長から五輪が実施できることを確信したとの言葉を引き出したというが、いかにもである。この3日間の実験データによって五輪開催を断行できるものではないだろう。

■新社長は総務省OB

 ゲーム事業から投資をしてスポーツ事業、地域再開発へと戦略的にシフトするDeNAでは、南場会長が6月から財界活動に乗り込むのに合わせたように、4月に社長を交代する。

 菅総理長男による接待で不祥事にまみれた総務省(郵政省)出身者の岡村信悟取締役兼COO(51)だ。岡村氏は2016年、南場氏に口説かれて同省情報流通行政局から転職。横浜スタジアム社長(現在は会長)を経て、現在はDeNAベイスターズの社長と同社のスポーツ事業を歩んできている。スポーツ事業を中心とした企業の社長になるために育てられてきたといえよう。

「なぜ総務省の人が社長になったのかわからない」と横浜スタジアム株主企業の関係者も首をかしげる。南場氏がいて目立たなかったが、今後、横浜市再開発の中で存在感を見せることになるのだろうか。

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