東芝旧経営陣は胸中複雑…1ドルで売った米ウエスチングハウスをカナダ企業が1兆円で買収
東芝旧経営陣らからすると何とも複雑でやり切れない思いだろう。
同社を「地獄へ誘った」(関係者)とされる元子会社で原子力発電設備大手の米ウエスチングハウス(WH)が、カナダのウラン採掘・生産会社「カメコ」を中核とする企業連合に買収されることが決まった。対価はWHの負債引き受け分も含めて78億7500万ドル(1兆1600億円)。東芝は2018年、WH向け債権9100億円を7割超引きの2400億円で投げ売り、保有株に関しては実質無償譲渡(売却額1ドル)を強いられている。
そのうえWH破綻で被った巨額損失を穴埋めするため“虎の子”とされていたメモリー事業の売却を余儀なくされ、経営の混乱はいまなお収まらない。東芝OB幹部からは「理不尽かつ不条理」との嘆き節も漏れる。
当時のレートで約6000億円(54億ドル)という巨費を投じて東芝がWHを子会社化したのは06年のこと。しかし東日本大震災を機に脱原発の流れが強まりWHの事業環境は急速に悪化。北米で進めていた原発の建設コストが跳ね上がるなどして損失が膨らみ、17年3月には連邦破産法第11条の適用を申請して経営破綻に追い込まれた。