小沢コージ
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小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

わずか2年で45%をEVに! ボルボの大胆すぎる「ニッポン電動化」戦略

公開日: 更新日:

ボルボ C40リチャージ(税込¥6,590,000~)/XC40リチャージ(税込¥6,390,000~)

「受注ベースですが2022年ボルボの日本市場における電動化率は約2割に達しました。正確には約18%ですが、これは日本の自動車ブランドの中では圧倒的に高い数字だと思います」(ボルボ関係者)

 ここ数年話題が尽きないクルマの電動化。ピュアなバッテリーEVや大容量電池搭載のプラグインハイブリッド(PHEV)の販売比率が欧州では軒並み1割から2割前後に到達。普及の早い北欧では5割超えの国もあるほどだが、2022年日本全体の乗用車販売の中に秘めるバッテリーEVの台数は、一部非公開のテスラなどを除き5万8813台。恐らく過去最高だが、それでも全体のわずか1.7%に過ぎない。

 よってEV普及が進めば先進国だと考える人にとっては「日本は遅れてる」という表現になるのだろうが、そんな我が国でもボルボは約2割をEV&PHEVが占めているのだ。

なぜ「ボルボだけ電動化率2割」なのか?

 ただし、ここでクルマに詳しい人なら、ちと疑問が沸くかもしれない。エコなイメージのボルボだが、今や都内じゃEV専業の北米テスラ車をよく見かけるし、BMWはすでにi3やiX3やiXなど多くのEVを市販、PHEVに関しても10車種以上も展開している。

 メルセデス・ベンツもここ数年EVを連発、すでにEQA、EQB、EQC、EQE、EQSとコンパクトからラージ系までマルチ展開。比べるとボルボの純粋なバッテリーEVは、去年SUVのC40リチャージとXC40リチャージを出しただけ。それもPHEVを除き販売台数はわずか800台強。

 比べると昨年10月までの数字だが、なんとテスラが3900台強、BMWが1600台強、メルセデスが1300台強もEVを日本で売っている。なのになぜ「ボルボだけ電動化率2割」なのか?

 シクミは簡単である。ボルボは全体の販売台数が少ないのだ。去年の国内輸入車販売ランキングは1位メルセデスの5万2000台、2位VWの3万2000台、3位BMWの3万台ときて、しばらく離れてボルボが1万6000台で8位に入る。台数的にはテスラやBMWのPHEVの方がボルボEVより全然売れている。だがメルセデスやBMWは、他にもガソリン車を売らなければならないのだ。

ボルボの目標が超前向きのワケ

 その点ボルボは、そもそもプレミアムブランドとして台数が少ない上、その中で電動化へ強力な舵を切った。具体的には2030年までに完全なEVメーカーになることを目指すだけでなく、手前の2025年にはグローバルで50%をバッテリーEVに、日本国内だけでも45%をEV化しようとしている。

 このEV普及が難しい国で、わずか2年後に半分をEVに! という超前向き目標に驚くが、そこにはワケがある。実は今回ボルボEVのC40リチャージとXC40リチャージに乗ったが、乗り味は極々普通でガソリン車から乗り換えても違和感がない。価格はXC40が639万円から、C40が659万円からと安くないが、そもそもボルボはガソリン車からして結構する。

 なにより「ボルボのお客さまはエンジンにはこだわらない」という。そこはエンジン好きの多いBMWやメルセデスとの最大の違いで、お客がボルボに求めるのは上質な北欧デザインと優れた衝突安全性。すでにライフスタイル商品としてのイメージが強く、同じ欧州ブランドの中でもボルボは極端にクリーンな存在で、ことのほかEVと相性がいいのだ。

 今後ボルボ・カー・ジャパンは毎年1車種づつ新しいEVを入れ、エンジン付きモデルは導入しないという。果たしてこの北欧式大胆電動化戦略、どこまで突き進めるだろうか。

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