西友(下)「小売業再生の請負人」大久保恒夫社長兼CEOと大株主KKRにすきま風が
これで楽天とKKRの共同経営体制はあっけなく崩壊。KKRが食品スーパーを、楽天がネットスーパーを引き受けることになった。
西友が北海道、九州の店舗(=不動産)を売ったのはKKRの出口戦略の一環である。大久保氏は、東洋経済オンラインのインタビュー(5月2日付)で、「これは株主(KKR)が判断したこと。私は反対したわけではないが、賛成もしていない」と語っている。
大久保氏は企業の利益成長には規模(小売業なら店舗数)が重要だと考えているからだ。大久保氏と投資ファンド、KKRが描く西友の方向性の違いが浮き彫りになった。
KKRの経営体制になって、西友グループは決算公告を開示するようになった。食品スーパー西友(単体)の23年12月期の売上高は前期比5.8%減の6647億円。営業利益は24.8%増の259億円。22年同期の208億円より利益は増えた。しかし、KKRから見れば、まったく不満足な数字である。利益はほとんど伸びていない。
持ち株会社西友HDの純損益は、赤字幅は縮小したとはいえ8億円の赤字。水面下の経営なのだ。
KKRは近い将来、西友をウォルマートに買い取ってもらうか、他の流通企業に売却することになるのだろう。流通に限ったことではない。高値で引き取ってくれるなら、どこでもいいのだ。
いずれにせよ、大久保氏は西友を去ることになるだろう。
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