著者のコラム一覧
有森隆経済ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

ブラザー工業(上)仁義なき戦いから一転、ローランドDGの買収を“断念”

公開日: 更新日:

 日本企業のM&A(合併・買収)の流れが大きく変わってきた。これまでは双方の合意に基づく買収がほとんどだったが、今では同意なき買収が珍しくなくなった。

 乗っ取りは、やりたい放題。“仁義なき戦い”が主戦場となってきたが、失敗する事例も出てきた。

 プリンターやファクスなど情報通信機器を製造するブラザー工業は3月13日、業務用プリンター大手ローランドディー.ジー.(DG)に買収を提案すると発表したが、今月9日、事実上の白旗を掲げた。ブラザーはM&Aを一から練り直す。

 ローランドDGは、米投資ファンドのタイヨウ・パシフィック・パートナーズと組んでMBO(経営陣が参加する買収)を実施している最中だった。ブラザーはローランドDGの同意を得ておらず、MBOに対抗する形の買収となった。

 ブラザーは1株5200円でTOBを実施するとしてきた。ローランドDGのMBOのためのTOB価格(5035円)を上回り、買収総額見通しは640億円。MBOが不成立となることを前提に、5月をメドにTOBを開始する、としていた。

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