国民民主が唱える「103万円の壁」解消に政府が喧伝…“金持ちほど恩恵”のレッテル貼りはマヤカシ

公開日: 更新日:

「年収800万円」は高所得者なのか

 注目すべきは同じ試算でも年収1000万円の減税幅は22.8万円で、同800万円と変わらないことだ。

「まず憲法の生存権を反映した『基礎控除』の額は2400万円以下の所得まで一律48万円。2400万円超から段階的に減り、2500万円超でゼロになる。一方『給与所得控除』の額は、所得が162万5000円を超えると、今度は段階的に増えますが、850万円超で上限の195万円に達すれば、後は所得が多かろうが変わりません。減税効果に差異が生じるボリュームゾーンは、年収103万~850万円の層に限られるのではないか」(立正大法制研究所特別研究員・浦野広明氏=税法)

 物価高騰に給与アップが追いつかない中、年収800万円程度は決して「高所得者」とは言い切れないはずだ。

「2400万円の収入まで基礎控除の額が一律なのはおかしいと思うなら、基準の所得を引き下げればいい。所得税には同じ『壁』でも、収入の多寡に応じた累進課税制度でありながら、富裕層になるほど税負担率が下がる『年収1億円の壁』がある。税収減が問題ならば富裕層への課税を強化し、まず『1億円の壁』を解消して控除引き上げの財源を捻出すべきです」(浦野広明氏)

 所得の多い人ほど、際限なく減税効果も大きくなるような言い分はマヤカシ。

 真に受ければ、中間所得層の間で無意味な分断を招くだけである。

  ◇  ◇  ◇

 国民民主が強くこだわる「年収103万円の壁」の解消は尻すぼみの様子も見え隠れ。同党内で「10万円でも20万円でも壁が引き上げられたら十分」と物分かりのいい意見が…。●関連記事『【もっと読む】国民民主党「“年収の壁”178万円に引き上げ」早くも腰砕け…識者が説く財源不足の一気解決策』で詳報している。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  3. 3

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 4

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  5. 5

    高市首相「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」どこへ? 中国、北朝鮮、ロシアからナメられっぱなしで早くもドン詰まり

  1. 6

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗

  2. 7

    阪神・佐藤輝明の侍J選外は“緊急辞退”だった!「今オフメジャー説」に球界ザワつく

  3. 8

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  4. 9

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  5. 10

    古川琴音“旧ジャニ御用達”も当然の「驚異の女優IQの高さ」と共演者の魅力を最大限に引き出すプロ根性