南シナ海で米と合同演習 日本は中国と戦う覚悟があるのか
「南シナ海は重要な海域」は米国の宣伝
海上自衛隊は9月、ヘリコプター空母「かが」(満載時2万6000㌧)、潜水艦「くろしお」(潜航時3600㌧)、護衛艦「いなづま」(満載時6300㌧)、同「すずつき」(同5000㌧)を南シナ海に派遣、横須賀を母港とする米空母「ドナルド・レーガン」(同10万6000㌧)を中心とする米艦隊と対潜水艦訓練を行った。
中国が南シナ海の支配を固めようとし、米海軍がそれに対抗するさなか、海上自衛隊が約4000㌔も南進し、中国潜水艦を探知、撃破する日米共同演習を行って戦力を誇示したのは「専守防衛」の趣旨に合致しない軽率な行動では、と思わざるを得ない。
「南シナ海は石油輸入ルートとして、日本にとり死活的に重要な海域」と言われる。だが、それは米国、とくに米海軍が海上自衛隊を有能な助手として南シナ海に引き込むための宣伝だ。中東から日本に向かうタンカーは必ずしも南シナ海を通る必要はない。インドネシアのバリ島の東、ロンボク海峡を抜け、フィリピンの東方を北上すれば原油輸入に差し支えはない。
今回のマラッカ海峡を抜け、南シナ海を通る航路よりも約1700㌔航程が伸び、大型タンカーの経済速力15ノットで3日弱かかる。政府は2014年6月3日、浜田和幸参議院議員の質問主意書に対し「ロンボク海峡回りでは燃料費、傭船費を1日1000万円と仮定し、約3000万円の費用増となる」と回答している。これは片道の話で、往復だと6000万円になるが、標準型の大型タンカーは30万キロリットル、すなわち3億リットルを積むから、リットル当り20銭増にすぎない。ガソリンがリットル約150円だから微々たる額だ。
日本全体で考えても、中東からの原油輸入は2016年で1億6800万キロリットルだから、海上運賃がキロリットル当り200円上って年に336億円、日本の石油輸入額6兆6000億円の0・5%だ。昨年訪日した中国人観光客735万人は1兆7000億円を日本で消費し、1人平均28万円だから、ロンボク回りのコスト増は中国人観光客12万人(1・6%)減と同等だ。