見過ごせない事実誤認「『恩赦』は憲法に書いてある」の嘘
今回の政令恩赦について、私は、それが原理的にも機能的にも不都合であるから、「抜かない刀」にしたらよい――と主張した。
原理的に不都合だということは、「天皇の大御心により罪一統を赦す」と言う語源が国民主権の日本国憲法体制に矛盾する――という意味である。機能的に不都合だということは、有罪確定者の処遇は、本来的に、法務省が中央更生保護審査会の意見を聴して「個別に」対応すべきもので、それを、罪や罰の種類を政令で定めて「まとめて一律に」赦すという行為が正当ではない――ということである。
今回の私見には賛成の反応が大多数であったが、ひとつ見過ごせない反論(事実誤認)があった。それは、「恩赦は憲法に根拠があり、それがダメだというなら改憲しかない」という意見である。
まず、憲法の7条(天皇の国事行為)6号は「大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権」と明記しており、そこには「恩赦」という文言はない。73条(内閣の職務権限)7号も同じである。つまり、「恩赦」は憲法に根拠のない法律上の用語にすぎないのである。