「親分子分」という擬制血縁関係=ビジネスモデルの崩壊
日本の暴力団を特徴づけるものに擬制血縁関係がある。実際の親がいるにもかかわらず、組員となる者は、これと見込んだ男を親分として選び取る。子分は親の言うことは黒いものを白いと言われても、親に従わなければならないとされる。
親になった者の第一の責務は、実の親も手に余すゴチャ者を世間に通用する人間に仕立て上げ、その者が自分の才覚で飯を食えるよう育てることだろう。
暴力団組織は企業とは違い、親分が子分に給料を払うのではなく、子分が自分の力量や才覚で食えるようになれば、逆に親分や組事務所に月会費や上納金を納める。つまり親分は子分の数が多ければ多いほど懐が潤う仕組みである。それもあって組は広域化する。
しかし、こうした擬制血縁関係は、現代では限りなくブラック企業に近い。社員に給料を払わなければブラック企業といわれても仕方ない。だが、暴力団は給料を払わないどころか、社員からカネを取る。
その根拠は「おまえが飯を食えるのは、うちの代紋(いわば組のバッジ)のおかげだ。つまり代紋が稼いだようなものだから、カネを親分に運べ」となろう。