夏の甲子園で公立校は“絶滅”危機…今夏わずか6校、加速する球児の二極化に指導者「受難の時代」と悲鳴
夏の甲子園大会(8月5日開幕)に出場する全49校が昨29日、出揃った。
春夏連覇を目指す横浜(神奈川)、夏連覇を目指す京都国際(京都)の他、叡明(埼玉)、未来富山(富山)、聖隷クリストファー(静岡)、豊橋中央(愛知)、綾羽(滋賀)の5校が初出場を決めた。
公立校は金足農(秋田)、市船橋(千葉)、県岐阜商(岐阜)、鳴門(徳島)、佐賀北(佐賀)、宮崎商(宮崎)の6校。昨夏は8強入りした大社(島根)、1勝を挙げた石橋(栃木)、菰野(三重)など12校が出場したが、今夏は半減。2010年からの15年間(コロナで中止の20年を除く)で最少となった。
07年夏に佐賀北の監督として「がばい旋風」を起こし、全国制覇を果たした百崎敏克氏(69=現・佐賀北野球部アドバイザー)がこう言う。
「私立の出場校はこの日も朝から練習しているでしょう。でも、うちはまだ夏休みじゃなくて、午前中は冷房の効いた教室で授業がありました。甲子園へ行くから午後の授業は免除してもらいましたが、練習時間が短い上に、一番暑い午後から練習するわけで、朝から効率的に練習をしている強豪校と差がつくのは当然です。野球人口の減少が叫ばれる中、中学生の二極化が進んでいます。佐賀県はボーイズなど硬式クラブチームが少ない地域ですが、硬式をやっている有名な子や意識の高い子は、だいたい他県の私立校に流れます。
寮があって専用グラウンドがあって室内練習場があるような強豪校です。九州なら神村学園(鹿児島)、明豊(大分)、福岡大大濠(福岡)など。関西だと大阪桐蔭(大阪)、遠い関東でも横浜、健大高崎(群馬)、山梨学院(山梨)といった全国の強豪私立のスカウティングには、とてもかないません。うちは学校の校庭でサッカー部と共用。寮も室内練習場もありません。うちに来てほしいなと思っても、めぼしい子は中3の春にはだいたい強豪私立校から声がかかっている。2年秋に進学先が内定していることもザラ。公立校はますます受難の時代に入っています」
横浜(私立)や横浜商(Y校=市立)などで監督、部長、コーチとして春夏通算30回以上の甲子園出場に尽力した小倉清一郎氏(81)も「ますます格差が広がるでしょうね」とこう指摘する。