小林節
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小林節慶応大名誉教授

1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院のロ客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

宮内庁長官の発言こそ憲法に適合 国民に寄り添ったお気持ちの代弁である

公開日: 更新日:

 6月24日、宮内庁の西村長官が、記者会見で、コロナウイルスの感染状況下で、天皇陛下が、「国民の不安の声がある中で、ご自身が名誉総裁を務めるオリンピックの開催が感染拡大につながらないか懸念されていると『拝察』している」として、「大会組織委等に、連携して感染拡大防止に万全を期していただきたい」と述べた。

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 それに対して、首相は、「長官本人の見解だ」と突き放し、公明党の山口代表は、「陛下の発言を詮索すべきものではない」と述べた。いずれも否定的である。

 右派の論客の中にはこの長官発言に怒っている者もいる。

 現行憲法の下で、天皇は「国民統合の象徴」(1条)と位置づけられており、その意味として、全ての国民と精神的に等距離であることが求められている。だからこそ、天皇は、国民の間に深刻な対立が必ず存在する「政治に関する権能を有しない」(4条)とも定められている。

 この点で、昭和天皇と上皇陛下(平成の天皇)は、その至難のお立場を全うなさったと思う。

 宮内庁長官は、天皇の公的な事務をつかさどる役所の長で、天皇の最側近の官僚である。だから、天皇の肉声を直に聞きその真意を対外的に発信する責任もある。また、古来、天皇の発言は、その性質上、直接引用してよいものではないとされている。

 そこで、今回の長官発言は、コロナ・パンデミックという大災害の中で、オリンピックという世界的な祭典の招致国の「象徴」としてその開会を宣する役割を担う立場の天皇陛下が感染拡大を懸念しておられるだろう……という趣旨のものであるが、これこそ、今の全国民の気持ちに寄り添った天皇ならではのお気持ちを、憲法との整合性の中で、最側近の官僚として見事に言い得た発言である。

 だから、それを「長官個人の見解」だと公的に無視を決め込んだり、さらにそれを「不当な発言」だと怒ったりすることの方が、日本国憲法の下の天皇制を理解していない勘違いであると言えよう。

 令和の天皇制は実に健在である。


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『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

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