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春名幹男国際ジャーナリスト

1946年生まれ。元共同通信特別編集委員。元名大教授。ボーン・上田賞受賞。著書に「秘密のファイル CIAの対日工作」など。

トランプ米大統領再選なら…ウクライナとガザに待ち受ける「不条理な結末」

公開日: 更新日:

 今年11月の米大統領選挙でトランプ前大統領が再選されたら、世界は一気に暗転の恐れがある。

 昨年の「反転攻勢」で失敗し、米国からの軍事支援も止められるウクライナは防戦一方となり、ドニプロ川の東岸をロシアが占領し、停戦という事態に陥る恐れがある。

 ロシアのウクライナ侵攻は国連が「国際法違反」と断定し、プーチン大統領が国際刑事裁判所(ICC)から起訴されながら、ロシア勝利という不条理な結末になるかもしれない。

 またパレスチナ自治区ガザについては全土をイスラエル軍が制圧してパレスチナ人を駆逐、入植を認める可能性もある。

■NATO同盟国に暴言

 トランプはこれまでプーチンを称賛する一方、ウクライナを侮辱する発言を続けてきた。

 またウクライナ軍事支援の中心となってきた北大西洋条約機構(NATO)についても、もはや米国の国益を代表しないという立場で、大統領在任中、何度も米国の「NATO脱退」を口にし、高官らに止められた経緯がある。

 また国防費を国内総生産(GDP)比率2%とする目標を満たしたNATO加盟国が11カ国しかないことに対して、トランプは不満を繰り返してきた。

 先月10日には「国防費を払わないなら、ロシアが好きなように(攻撃)せよと督励する」と同盟国に対してあるまじき暴言を吐いた。

 バイデン政権のジェイク・サリバン米大統領補佐官は「独裁者に立ち向かわなければ、世界の諸国の安全保障にひどい結末となる」と警告しているが、政権を失えば、トランプの思いのままになってしまう。

■ネタニヤフにべったり

 パレスチナ問題をめぐり、トランプは在イスラエル米大使館をエルサレムに移転させるなど、イスラエルのネタニヤフ首相べったりの態度をとってきた。

 根本的な問題解決のためには、パレスチナ国家建設が必要となる。しかし、トランプ再選で再びネタニヤフの強硬路線を支持すれば、事態はさらに悪化するのは目に見えている。

■日本の基地負担1兆円超

 NATOの問題は、在日米軍経費の日本政府負担分をめぐる問題に波及する恐れがある。トランプは「日本は80億ドル(約1.2兆円)払え」と何度も要求してきた。恐らく彼は、日本が「思いやり予算」しか払っていないと誤解しているに違いない。

 5年に1度改定される思いやり予算は、改定のつど2000億円前後の額が報道される。現実には、日本側の負担は日米地位協定に基づく経費や米軍再編関係経費など約6000億円に、防衛省以外の他省庁の担当経費を加えると総額1兆円を超えている。トランプにその真実を知らせる時がきた。 (つづく)

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