<第16回>「投手としてはいつかくじけるだろうと」…あえて「左打ち」に変えさせた父・徹さんの親心

公開日: 更新日:

 徹は入部してすぐに投手から内野手、内野手から外野手へとコンバートされた。右投げ右打ちだった徹は足に自信があったし、野手で生きていくためにも有利と思う左打ちに変えた。高校1年から2年にかけてのことだ。

 徹が高2だった79年は、右投げ左打ちの篠塚和典が巨人に入団して4年目。76試合に出場して二塁手のレギュラーをつかみかけていた。左打ちではなかったものの、右投げ両打ちの高橋慶彦(広島)が2年連続3割をマーク、55盗塁でタイトルを獲得した年でもある。「先輩たちの間で右投げ左打ちがはやっていた」(徹)という背景もあるだろう。

「自分もそうでしたけど、最初、右打ちだった人が左打ちに変えると、感覚的なものも含めてしっくりくるようになるまで丸々3年くらいはかかってしまうのです。だったら最初から左打ちの方がいいだろうと。ボクが左打ちでしたし、その方が教えやすいというのもありました」

 大谷は水沢リトルで最初、外野手だった。やがて投手と外野手、投手と遊撃手といった具合に併用され、花巻東高に進学してからもエース兼中軸打者として活躍した。左打者として高校通算56本塁打のスラッガーに成長したものの、徹には誤算も生じた。それは「ピッチャーとしていつかはくじける」という読みが外れたことだ。

 肩肘を含めた右腕は右打席なら投手から隠せても、左打席ではできない。よかれと思って変えた左打ちによって、商売道具を死球の危険にさらすことになったのだ。

 徹は「いま考えると失敗したかな、とも思ってるんですけどね」と言って笑った。(つづく=敬称略)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  3. 3

    大谷翔平も目を丸くした超豪華キャンプ施設の全貌…村上、岡本、今井にブルージェイズ入りのススメ

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  5. 5

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  1. 6

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  2. 7

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  3. 8

    ドジャースが村上宗隆獲得へ前のめりか? 大谷翔平が「日本人選手が増えるかも」と意味深発言

  4. 9

    巨人が現役ドラフトで獲得「剛腕左腕」松浦慶斗の強みと弱み…他球団編成担当は「魔改造次第」

  5. 10

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  3. 3

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  4. 4

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  5. 5

    やす子の毒舌芸またもや炎上のナゼ…「だからデビューできない」執拗な“イジり”に猪狩蒼弥のファン激怒

  1. 6

    羽鳥慎一アナが「好きな男性アナランキング2025」首位陥落で3位に…1強時代からピークアウトの業界評

  2. 7

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 8

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  4. 9

    渡部建「多目的トイレ不倫」謝罪会見から5年でも続く「許してもらえないキャラ」…脱皮のタイミングは佐々木希が握る

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」