侍J強化本部長に聞いた プレミア12の勝因と稲葉監督の手腕

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謙虚な稲葉、自信の稲葉

 ――小久保監督は監督の実績がない中で、選手の誕生日まで把握するなど、選手、コーチとのコミュニケーションを重視した。

「(小久保監督と同じく)稲葉監督はコーチ、選手と実直にコミュニケーションを図り、信頼関係を築いた。普段から自分自身を高めようともしていた。こういう姿に人は信頼を寄せるものでしょう。戦いの中では『謙虚な稲葉』もいれば、『自信の稲葉』もいた。先発ローテーションを守るという頑としたものがあったし、試合によって打順を変更したが、何より選手の理解が必要です。代表メンバーはスター選手の集まり。各チームでは中軸を打ち、バントをしたことがないという選手でも、個々の役割に徹するよう導いた。特に日本は外国のチームに勝つ上で、チーム力が重要になる。個々の選手がつながり、機能することが大きな武器になるはずです」

 ――コーチ人事は、稲葉監督が在籍していた日本ハムのOBが中心。「お友達内閣」という声もありました。

「実際に仕事ぶりを見ていると、スタッフ同士は非常に連携が取れていた。試合ごとに、首脳陣は長い時間をかけて、議論し、コミュニケーションを欠かさなかった。各コーチは役割を理解し、知識、情熱もある。私の知る限りでは、このメンバーが最高だと思っています」

■秋山翔吾の野球談義

 ――選手選考では、メジャー挑戦を表明した秋山(西武)、菊池(広島)、山口がメンバー入りした。

「侍ジャパンの輪の中に入りたい、という選手を拒む必要は全くありません。彼らはひょっとしたら東京五輪のメンバーにならないかもしれない。でも、プレミア12に勝って、東京五輪につなげるという意味でも、彼らの力が必要だという判断。たとえば秋山は、強化試合で骨折をしてしまいましたが、合宿中から選手たちが彼と打撃の議論をし、懇切丁寧に理論を伝えていた。ZOZOマリン、東京ドームでは一緒になって応援していた。野球への情熱、あふれる知識、人間的にも素晴らしい選手だと感じました」

 ――来年は東京五輪。ファンは金メダルを期待している。

「野球は日本の中である程度は成熟し、ファンが求めるハードルは高いと思う。その中で、厳しい試合を重ねながら、最終的に世界一になった。簡単にはできないことだと思う。私自身、野球という競技として考えると、競技人口が減る中で、野球をやってくれる子供たちがプレミア12を見て、ああいう選手になりたい、ああいう本塁打を打ちたいと思ってくれたら、この上ありません。侍ジャパンの姿を見て、野球をやっていることに勇気や自信を持ち、さらなる高みに向けて、挑戦する力になってくれたらと。野球に関わる子供たちに恩返しをする意味でも、野球界のさらなる発展につなげるためにも、東京五輪で金メダルを獲得すべく、しっかり準備をしていきます」

▽やまなか・まさたけ 1947年、大分県生まれ。佐伯鶴城高、法政大、住友金属工業で投手としてプレー。東京六大学最多勝利記録保持者(48勝)。住友金属で監督を務めた後、88年ソウル五輪コーチで銀メダル、92年バルセロナ五輪監督で銅メダルを獲得。法政大監督、横浜ベイスターズ専務などを歴任し、2016年野球殿堂入り。17年から侍ジャパン強化委員会強化本部長を務め、18年に一般財団法人・全日本野球協会会長に就任。

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