(5)口癖は「お前ら、いつでもクビだ!」
大野は、怒りに火がつくと、抑えることができなかった。
「最初、大野さんを日ノ本テレビからスカウトしてきた時は、温厚でいい人だと思ったのです。ところが視聴率が良くなってくると、傲慢増長して、ディレクターを怒鳴るようになりました。いい番組を作りたいんだと思って、我慢していましたが、そのうち人間性まで否定するようになって『死ね!』『殺すぞ!』『お前ら、いつでもクビだ』ですからね。ディレクターの中には体調を崩したり、精神的に参ったり……。それで退職した者もいました。私もギリギリでした。番組なんかどうでもいいから大野さんの頭をたたき割ってやりたいと何度思ったことか。このままだと、殺しかねないと思いました。それで退職しようと準備をしていたら、亡くなったので、本当に救われたって思いましたよ。犯人に感謝です。言っておきますが、殺したいと思っても、実際に殺すのとは違いますからね。私はやっていません」
杉本は、大きくため息をついた。彼にも、十分な動機がある。
次に話し始めたのは、フリーアナウンサーでタレントの瀬戸洋子だ。年齢は27歳。愛くるしい顔立ちである。大学時代は、新体操で活躍したそうだ。