鈴村裕輔
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鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

マーリンズGMキム・アング氏の退団はメジャーリーグの「ガラスの天井」の厚さを物語る

公開日: 更新日:

 それだけに今年10月に退任を発表した際は驚きの声をもって迎えられた。「われわれは慰留したがアング氏の意思は固かった」とは球団側の説明だが、「初の女性GM」の頭上には目に見える厚い壁が立ちはだかっていた。

 すなわち、マーリンズはGMの上長として編成本部長の職を新たに設け、レイズのGMであったピーター・ベンディックスを招聘したのだ。従来、マーリンズではGMが編成業務の最高責任者であり、アングは自らの意思と責任によって選手の指名や移籍などを行ってきた。それにもかかわらず編成本部長職が新設されたため、GMは編成部門の長から本部長の決裁を仰ぐ存在へと地位が低下したのである。

 良好な実績を残してきたアングだけに、今回の措置は名義上「女性GM」を残しつつ編成の主導権を男性に取り戻そうとする動きと映ったのであり、権限を伴わないGMを辞任したのは当然だった。

 その意味で、アングの一件は大リーグにおける「ガラスの天井」が依然として厚いことをわれわれに教えたのである。

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