私の友人のカメラマンは長嶋茂雄さんの引退時、「これで日本が終わる」と泣いていた
ただ長嶋茂雄の明るいおおらかな人柄は、野球人生が終わっても話題になり、かのカメラマンも「長嶋茂雄は天然の人」とぞっこんであった。
長嶋茂雄は小さな買い物をするときに、必ず1万円札を出して「あっ、お釣りはいらない」と言うそうだ。店員が驚き「困ります」というと「あっ、そう」。そんなエピソードを何かで知ったとき、私は一気に長嶋茂雄のファンになり、その後カメラマンとぐっと親しく長嶋茂雄について、延々と同じ話を繰り返し、幸せな時間を過ごすのだ。
▽沢野ひとし(さわの・ひとし) イラストレーター、エッセイスト、絵本作家。1944年、愛知県生まれ。書評誌「本の雑誌」創刊時の76年から表紙と本文イラストを担当。第22回講談社出版文化賞さしえ賞受賞。著書に「ジジイの昭和絵日記」「そうだ、山に行こう」ほか多数。