著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

上田綺世〈前編〉代表入りの裏に森保監督の長男が繋いだ縁「父が見たいと言っている」(法政大サッカー部元監督・長山一也)

公開日: 更新日:

「実は森保さんの長男の翔平君(現LISEM)が法政OBで…」

 ──特に大きな変化を感じたのは?

「1年だった2017年9月の総理大臣杯決勝・明治大戦で決勝ゴールを挙げた頃ですね。2つ上にディサロ燦シルヴァーノ(山形)、1つ上に紺野和也(川崎)、同期に長谷川元希(長崎)、森岡陸(磐田)がいたチームです。相手に押される状況もあった中、綺世がミドルシュートを決めてくれた。それも普通の感覚なら狙わないような距離から打ちました。フィニッシュでゴールを決め、チームを勝たせる形を持っていた。本当にエースらしい活躍ぶりでした」

 ──森保一監督は、同年12月のM-150カップ(タイ)に挑むU-20日本代表に上田選手を招集しました。これが森保ジャパンとの始まりでした。

「実は森保さんの長男の翔平君(現LISEM)が法政OBで、私が監督になってすぐの頃、チームを探しながら法政の練習に参加していた時期があったんです。その縁で『父が上田君を見るために練習場に行きたいと言っています』とつないでくれて、実際に来られたことがありました。それが2017年11月のこと。綺世を一目見てニコニコしていましたけど、気に入ったんだと思います。実際、あの時点で綺世は飛び抜けた存在感を誇っていましたからね。私も総理大臣杯優勝後に『日本を代表する選手になる』とコメントしましたけど、本当にそれだけの迫力とスケール感がありました。過去の日本には大型FWと言われる選手が何人かいましたが、俊敏性が欠けていたり、運動量が少なかったり、何か足りない印象があった。でも綺世はサイズ、速さ、技術と全てを備えていたので本当に楽しみでした」

 ──1年の終わりから代表に呼ばれるようになってからの変化は?

「確実に自信がついて、上を目指す意識も高まりましたね。ただ、2年だった2018年時点で東京五輪世代FWのメインは、小川航基(NECナイメンヘン)や田川享介(鹿島)だった。他の候補もみんなプロでやっていたので『自分も早くプロになりたい』という気持ちが高まっていったと思います。それでも綺世のえらいところは、代表経験を法政のチームメートに伝える作業を率先してやってくれたこと。シュート練習1つとっても『こういうパスを出して』『もっと動きながら狙って』と具体的に指示していたので周りの仲間もレベルアップした。本人の言語化能力も上がったでしょうし、監督としても有難く感じていました」

 ──そして3年の2019年6月には日本代表としてコパアメリカ(ブラジル)に参戦。直後の7月にはユニバーシアード(イタリア)で優勝します。

「コパアメリカに出発する直前、綺世が代表のスーツを着て、法政の監督室にやってきた。『コパとユニバーが終わった後、前倒しで鹿島に行きたい』とストレートに告げられました。2年の終わりから鹿島の特別指定選手にはなっていましたが、代表やユニバーの活動もあってなかなか鹿島に行くタイミングがなかった。それも踏まえつつ、我々としては通常よりも早くプロに送り出す準備を進めていたんですが、このタイミングで本格的に環境を整える必要性が出てきました。高校の推薦枠、法政の戦力維持など、いろいろ考えるべきことがあって長友佑都、室屋成(ともにFC東京)といった(在学中にサッカー部を退部してプロ入りの)経験値のある明治大の栗田大輔監督(現東京V副社長)にも相談しました。綺世の場合は日本代表入りという事実があったので、学校側の理解も早かった。『卒業だけはさせる』という約束をして、鹿島入りできるように努めました」(【後編】につづく)

(聞き手=元川悦子/サッカージャーナリスト)

▽上田綺世(うえだ・あやせ) 1998年8月28日生まれ、27歳。茨城・水戸市出身。鹿島の下部組織から鹿島学園高ー法政大。2019年7月、サッカー部を退部して鹿島入り。2022年7月、ベルギー1部サークル・ブルッフに完全移籍。2023年夏にオランダの強豪フェイエノールトにステップアップ。25/26年シーズンは開幕から3試合連続ゴールなど好調なスタートを切り、最終的に31試合25ゴールで得点王に輝いた。2019年5月に日本代表初選出。2021年東京五輪出場。翌2022年カタールW杯参戦。北中米W杯予選では主戦FWとしてゴールを量産。2025年11月のブラジル戦で逆転ゴールを決めて王国戦初勝利に貢献した。身長182センチ・体重76キロ。

▽長山一也(ながやま・かずや) 1982年4月1日生まれ、48歳。鹿児島・南さつま市出身。桜島中で元日本代表MF遠藤保仁の2学年下。帝京第三高(山梨)から法政大に進み、卒業後にJFL北陸、Jリーグ富山でプレーした。引退して富山で育成コーチを務めて2014年、法政大サッカー部監督に就任。関東リーグ1部昇格、総理大臣杯準優勝、2018年には全日本サッカー選手権で優勝に導いた。2023年から富山トップチームのコーチ。松本山雅トップチームのコーチを経て2026年1月、東海リーグ1部「FC.ISE-SHIMA」トップチームの監督に就任した。

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