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元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

堂安律〈前編〉小学生時代の第一印象は「おっさん」…ガンバ育成組織で磨かれたゴールへの貪欲さ(元ガンバ大阪ジュニアユース監督・梅津博徳)

公開日: 更新日:

FW堂安律(ドイツ1部フランクフルト/27)

 前回カタールW杯のドイツ、スペイン戦でゴールを決め、歴史的金星獲得の原動力となった堂安は、第2次森保ジャパンではエースナンバー「10」を背負い、3月のイングランド戦ではキャプテンマークを巻くなど北中米W杯で主軸を担うのは間違いない。ガンバ大阪の育成組織時代を知る梅津博徳・現横浜F・マリノスジュニアユース監督に聞いた──。

  ◇  ◇  ◇
 
 ──梅津さんは稲本潤一さんとガンバユースの同期。近畿大卒業後、ガンバに戻り、10代の宇佐美貴史(G大阪)、鎌田大地(クリスタルパレス)ら歴代W杯日本代表選手を指導してきました。堂安選手との出会いは?

「律は小学生時代、西宮SSというクラブでプレーしていたんですが、知人を通して『よい選手がいるから絶対にガンバで取った方がいい』と勧められ、見に行かせてもらったのが最初です。その時の印象は『おっさん』というイメージ(笑)。ボランチの底であまり動かない選手だなと思いました。前線によいフィニッシャーがいたので、ドンと構えてそこにボールを配球していましたね。当時の律は名古屋とJFAアカデミーとガンバで進路をどうするか悩んでいると聞いていた。結果的にガンバに来てもらえてよかったです」

 ──U-16日本代表時代の堂安選手は左SBもこなしたことがありますが、ボランチは意外ですね。

「ガンバのジュニアユースに入ってからは直接指導はしていないのですが、1つ上に初瀬亮、林大地(ともにG大阪)、田中駿汰(C大阪)らタレントが揃っている中、中2からアタッカーとしてレギュラーになった。そこでゴールに向かう姿勢に磨きをかけたのがよかったのかなと感じます」

 ──ジュニアユース時代は鴨川幸司監督(現RISEISHA U-15監督)が中心となって指導に当たっていました。梅津さんも同じクラブ内で見守っていたと思いますが。

「そうですね。ガンバのメソッドと言われるものは特にないですけど、『当たり前のことをやる』という考え方で、鍛え上げるような厳しい練習もありました。そういう中で律は自分を表現することを学んでいったと思います。もともと全然話を聞かない人間ではないですし、むしろ指導者が言うことをスッと聞き入れるタイプ。当時からプロになることを念頭に置いていて、サッカーが大好きな子だったので、自分なりに考えて前進したと思います」

 ──そして梅津さんはユースに上がった堂安選手と再会します。

「高1の時点では僕が最初に見た『おっさん』のイメージは全くなくて、完全にアタッカーでしたね(笑)。ユース昇格時からレギュラークラスの実力がありました。ただ、好きなことしかしない、切り替えが遅いといった課題はあったので、そういう部分では真摯に向き合いましたね。ガンバは『常にゴールを目指す』『最短距離でゴールに向かう』という考え方が以前からあったので、そこに対しても口を酸っぱくして言った記憶があります。鴨川さんも僕もストロング(ポイント)をどんどん伸ばしていこうというスタンスだった。ゴールに向かう貪欲さ、左足の技術の高さといった律のよさを伸ばすことを最優先に考えていたつもりです」

「『走れ』と言われて『日本に帰ってから走ります』」

 ──10代の堂安選手は年長者とプレーする機会が圧倒的に多かったと思いますが、物怖じしないメンタリティを備えていたんでしょうね。

「監督やコーチ、先輩の言うことを聞くだけではなくて、自分からアクションを起こせるところは優れた選手の条件。初瀬や律は自分があるのに周りを惹きつけ、可愛がってもらえる人間的な魅力を持っていた。そこは大きかったですね。律はご両親もすごく明るくて素晴らしい方。教育が良かったから、素晴らしいパーソナリティが養われたのかなと感じます」

 ──ガンバは稲本、本田、堂安とW杯で複数得点を取るようなアタッカーを続々と輩出しています。その背景には何があると思いますか?

「僕らの恩師である上野山信行さんが『世界へ行け』と口癖のように言っていたんですが、その影響は大きいと思います。クラブとしても宇佐美世代くらいから定期的にアカデミーの海外遠征を行うようになったんですが、外国籍選手と対峙して肌で感じることは非常に大きかったですね。律の場合はU-15から日本代表入りしているんで、個人としては世界に出ていった経験はあったと思いますけど、中学生の時にはバルセロナ遠征に行きましたね。律がボールに空気を入れていなくて、鴨川さんから『走れ』と言われて『日本に帰ってから走ります』と答えたというエピソードは、我々の中ではよく知られた話です(笑)。『せっかくバルセロナにいるんだから少しでも高いレベルを吸収したい』という思いから出た言葉なんでしょうね。そういうことを言えるのが律なんです」

 ──興味深い話ですね。ユース時代の遠征は?

「高1の時にマレーシア・インドネシア2か国開催の大会に参加しました。元アルゼンチン代表のベロンが代表を務めるチームと対戦して負けて、予選敗退しましたけど、マリーシアとか駆け引きとかを学ぶ貴重な機会になったのは間違いない。アジア特有の難しさを知った意味でも大きかったと思います」(【後編】につづく)

(聞き手=元川悦子/サッカージャーナリスト)

▽堂安律(どうあん・りつ) 1998年6月16日生まれ。兵庫・尼崎出身。中学進学時にガンバ大阪ジュニアユースに入団。12年に史上初のU-15全国3冠を達成した。ユース時代の高校2年でトップ登録されてJリーグデビュー。17年にオランダに移籍。22年にドイツ・フライブルグに完全移籍。25年8月に強豪フランクフルトに引き抜かれた。各年代別代表に選ばれ、18年8月に日本代表に初招集された。22年W杯カタール大会ベスト16。北中米W杯でエースナンバー「背番号10」を着けて戦う。

▽梅津博徳(うめず・ひろのり) 1979年5月18日生まれ、47歳。埼玉県出身。ガンバ大阪の下部組織でユースまでプレー。同期に日本代表MF稲本潤一(アーセナル、ガラタサライ、フランクフルトなどでプレー。現川崎FRO)、DF新井場徹(G大阪、鹿島、C大阪でプレー)らがいる。近畿大卒業後、G大阪の下部組織で指導者人生をスタート。MF井手口陽介(リーズ、セルティックなどでプレー)を日本代表に育てるなどキャリアを磨いた。19年にはG大阪ジュニアユース監督として高円宮杯U-15決勝を制し、チームを7大会ぶりの優勝に導いた。翌20年に横浜Mジュニアユースのコーチングスタッフ入り。現在ジュニアユース監督。

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