「北朝鮮で何が起きているのか」伊豆見元著
<北朝鮮とアジアのいま>
金正恩のトップ就任以来、挑発的な行動と言辞を繰り返す北朝鮮。果たして、その実態は――。
<南北朝鮮の休戦協定「白紙化」の真実>
北朝鮮は常に「相手が仕掛けてきたからこちらもやむなく強気に応じるのだ」と主張する。その点は金日成時代から一貫して変わらず、受け身的な表現をとってきている。
朝鮮戦争の休戦協定をほごにするとして騒ぎになった今年3月の発表も同じ。米韓軍事演習という「敵対勢力の極悪非道な戦争行為」を仕掛けられたがゆえに、自分たちも「朝鮮戦争停戦協定を完全に白紙化」して対抗するとしたのだ。
著者によれば実はこれは穏健な内容。協定の「破棄」ではなく「白紙化」という言い方は駆け引きの用語だからだ。
ところがオバマ政権は深刻に受け止め、B52戦略爆撃機を演習に投入して、かえって北朝鮮が引っ込みのつかなくなる事態を生み出してしまった、と著者。状況的にアメリカ敵対視政策に走る北朝鮮だが、今後はミサイル開発を抑え、「経済強国建設」という悲願に向かわなければ金正恩体制の永続もないだろうと著者は観察している。