「かつお節と日本人」藤林泰氏

公開日: 更新日:

 かつお節は日清・日露戦争で携行食になり、兵士が郷里に帰ってかつお節の味を広めた。1920年代には、パラオ、マレーシアのシアミル島、インドネシアのビトゥンなどに工場ができ「南洋節」が作られ、池間島や伊平屋島など、沖縄からの移民が多く働いていた。

「南洋で働いていた人たちに話を聞くと、休みの日には料亭に出かけて、いい生活だったそうです。ところが太平洋戦争とともに現地で徴用され、亡くなったり収容所に入れられたりして、ぼくが訪れたビトゥンでは、戦前に地元の女性と結婚した日本人の孫がいて、いま茨城県大洗の水産加工場に出稼ぎにきています。かつお節をめぐるこういうグローバルな移動や交流の歴史をみると、国籍って何だろう、日本人って何だろうと思いますね」
(岩波書店 760円)

◇ふじばやし・やすし 1948年、山口県生まれ。早稲田大学法学部卒業。現在、埼玉大学教授。共編著「カツオとかつお節の同時代史」「ODAをどう変えればいいのか」、共著「海のアジア6 アジアの海と日本人」など。

【連載】著者インタビュー

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  4. 4

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  5. 5

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  1. 6

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    矢地祐介との破局報道から1年超…川口春奈「お誘いもない」プライベートに「庶民と変わらない」と共感殺到

  4. 9

    渡邊渚“逆ギレ”から見え隠れするフジ退社1年後の正念場…現状では「一発屋」と同じ末路も

  5. 10

    巨人FA捕手・甲斐拓也の“存在価値”はますます減少…同僚岸田が侍J選出でジリ貧状態