「足元の小宇宙」埴沙萠著
■身近な植物たちの生命の輝きを見つめる
草木に魅せられ、半世紀以上にわたってその世界を撮影してきた82歳の植物生態写真家による写真エッセー。大反響を呼んだテレビ番組の書籍化だ。
植物学を志していた19歳のときにサボテン研究家の龍胆寺雄(りゅうたんじゆう)氏と出会い、栽培の手伝いをしながらサボテンについて勉強。やがて龍胆寺氏の著書に掲載する写真を撮影するために、カメラを手にするようになったという。
そうした中、厳しい環境下に生きるサボテンを作り出した自然の愛や生命の知恵は、足元の草にもそそがれているはずだと、身近な植物たちの生きていることの美しさや、生きる仕組みの素晴らしさをカメラに収めるようになる。
本書では、森の一員になったばかりのクロマツの芽生えや、花びらも蜜ももたないカテンソウがばね仕掛けのおしべでピッチングマシンのように花粉を放り投げた瞬間、歌舞伎のクモの糸のように繊細な花びらが縦横無尽に開いたカラスウリの雌花、ツリフネソウの実がはじけて種が飛ぶさま、そして雨中で胞子を飛ばすシイタケなど、これまでの作品を紹介しながら、植物たちの世界を語る。