「ももクロ論」清家竜介、桐原永叔著
■AKB48「総選挙」には日本的権威主義があらわ
ちかごろのアイドル論といえば、××学者が専門知識を駆使しながら妙に熱っぽい口調で深読み・裏読みを連発している。本書もそのひとつで、著者のひとりは早稲田大助教の社会学者(もうひとりはライター・編集者)。
AKB48は「総選挙」と称する人気投票でメンバーの順位が決まったり、クビになったりする。イベントは「公開処刑」のようなものだとすらいわれたが、著者はこれを日本社会に顕著な「権威主義的パーソナリティー」の証明例ではないかという。
過酷な現実を肯定しつつ、自己破壊の危険性を秘めたシステムや、各メンバーを「推す」オタク集団が全体として「和」を重んじながら他メンバーに対する敵意を共存させているさまは日本的な権威主義の仕組みをあらわにしていると見る。
他方のももクロはAKBの持つ生真面目さを超越し、とてつもない楽しさをテコに祝祭が日常を逆転させる力を生み出そうとしている。それはシステムによって抑圧されたものを回復しようとする大衆芸能の力だという。ドラマ「あまちゃん」のユイちゃんはAKB的だが、アキちゃんはももクロ的だというわけだ。