「日本は戦争をするのか」半田滋著

公開日: 更新日:

 今回の集団的自衛権問題に立ち向かう反対論陣で目立つのが現役・退役をふくむ自衛隊員たち。その理由の一端は、安倍首相が国軍の最高司令官を気どりながら、実は自衛隊の実態や制度に無知で無頓着なところにあるのではないか。

 本書第1章によれば安倍氏は首相になる前の2012年、自民党総裁としておこなった講演で、退役した自衛官を海上保安庁に移し、即応予備自衛官を海保に編入すべきだ、と主張した。ところが海保の巡視船は重油で動くディーゼルエンジン、海自の護衛艦は軽油のガスタービンで互換性は皆無。おまけに即応予備自衛官とは全員が陸自なのだから、それを船乗りにするなどあり得ない話。安倍氏の「軍国主義」がいかに頭でっかちの付け焼き刃かがわかろうというものだ。

 このご仁が打ち出した集団的自衛権は、もともと第1次内閣時代に招集した懇談会が報告書に記した概念。ではこの通称「法制懇」はどんな集団なのか。まず14人のメンバーのうち憲法の専門家はわずか1人。逆に外務省と防衛省・自衛隊OBは4人。しかも全員が講演や論文で集団的自衛権を容認してきた面々なのである。安倍首相の視野と思考の狭さが本書を読むとよくわかる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    清原和博氏が巨人主催イベントに出演決定も…盟友・桑田真澄は球団と冷戦突入で「KK復活」は幻に

  2. 2

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  3. 3

    99年シーズン途中で極度の不振…典型的ゴマすりコーチとの闘争

  4. 4

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  5. 5

    日銀を脅し、税調を仕切り…タガが外れた経済対策21兆円は「ただのバラマキ」

  1. 6

    巨人今オフ大補強の本命はソフトB有原航平 オーナー「先発、外野手、クリーンアップ打てる外野手」発言の裏で虎視眈々

  2. 7

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  3. 8

    林芳正総務相「政治とカネ」問題で狭まる包囲網…地方議員複数が名前出しコメントの大ダメージ

  4. 9

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  5. 10

    角界が懸念する史上初の「大関ゼロ危機」…安青錦の昇進にはかえって追い風に?