「星々たち」桜木紫乃著

公開日: 更新日:

 恵まれない境遇のなかで不器用ながらそれでも生きていく塚本千春というひとりの女の運命を、彼女と関わったさまざまな人々からの視点で描いた9つの短編連作集。

 第1編「ひとりワルツ」は、妻子ある男に捨てられ千春を実家に預けて働く千春の母親の視点から、女としてある男に引かれつつも夏休みに罪滅ぼしのように中学1年の娘と過ごす日常が語られる。

 第2編「渚のひと」では、千春の近所に住む主婦の視点から、母と離れて暮らす千春を気遣いながらも千春と息子との関係に気づいてこっそり手を打つ一部始終が語られる。

 第3編「隠れ家」では、ススキノで働く人気の踊り子と千春の出会いが描かれる。

 ページをめくるに従い、千春は大人の女となり、母となり、年老いていく。千春はもちろん、出会った人たちひとりひとりが、どんなに情けない状況でもそれぞれの場所で必死に生き、そっと散っていく。

 ひとつひとつの人生をいとおしむ筆者の優しい視線に癒やされる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  3. 3

    「おこめ券」迫られる軌道修正…自治体首長から強烈批判、鈴木農相の地元山形も「NO」突き付け

  4. 4

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  5. 5

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  1. 6

    12月でも被害・出没続々…クマが冬眠できない事情と、する必要がなくなった理由

  2. 7

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  4. 9

    黄川田地方創生相が高市政権の“弱点”に急浮上…予算委でグダグダ答弁連発、突如ニヤつく超KYぶり

  5. 10

    2025年のヒロイン今田美桜&河合優実の「あんぱん」人気コンビに暗雲…来年の活躍危惧の見通しも