「星々たち」桜木紫乃著

公開日: 更新日:

 恵まれない境遇のなかで不器用ながらそれでも生きていく塚本千春というひとりの女の運命を、彼女と関わったさまざまな人々からの視点で描いた9つの短編連作集。

 第1編「ひとりワルツ」は、妻子ある男に捨てられ千春を実家に預けて働く千春の母親の視点から、女としてある男に引かれつつも夏休みに罪滅ぼしのように中学1年の娘と過ごす日常が語られる。

 第2編「渚のひと」では、千春の近所に住む主婦の視点から、母と離れて暮らす千春を気遣いながらも千春と息子との関係に気づいてこっそり手を打つ一部始終が語られる。

 第3編「隠れ家」では、ススキノで働く人気の踊り子と千春の出会いが描かれる。

 ページをめくるに従い、千春は大人の女となり、母となり、年老いていく。千春はもちろん、出会った人たちひとりひとりが、どんなに情けない状況でもそれぞれの場所で必死に生き、そっと散っていく。

 ひとつひとつの人生をいとおしむ筆者の優しい視線に癒やされる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  2. 2

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  3. 3

    マエケン楽天入り最有力…“本命”だった巨人はフラれて万々歳? OB投手も「獲得失敗がプラスになる」

  4. 4

    中日FA柳に続きマエケンにも逃げられ…苦境の巨人にまさかの菅野智之“出戻り復帰”が浮上

  5. 5

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  1. 6

    高市政権の“軍拡シナリオ”に綻び…トランプ大統領との電話会談で露呈した「米国の本音」

  2. 7

    エジプト考古学者・吉村作治さんは5年間の車椅子生活を経て…80歳の現在も情熱を失わず

  3. 8

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  4. 9

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  5. 10

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ