「リオとタケル」中村安希氏

公開日: 更新日:

 70年代から90年代にかけてアメリカの演劇界でデザイナーとして活躍し、今なお人々からの信頼厚いリオとタケルというゲイカップルを追ったノンフィクションである。

「リオは私の学生時代の恩師で、とにかく誰からも好かれる人でした。かくいう私もその一人で、卒業してからも何かとまとわりついていた(笑い)。一言でいうと一人の人間として他に類を見ない魅力があるんです。彼はその魅力をどのように身に付けたのか、私はなぜこんなに彼に引かれるのかを知りたかったのが取材を始めたキッカケです」

 リオの人生を追ううえで、抜きにして語れないのがリオと38年間共に暮らすパートナーである日本人のタケルだ。

 著者は日米を行き来し、2人の家族、友人、同僚といった周縁を3年かけて取材した。そこから見えてくるのは、ゲイを公表して生きる彼らが、オープンな人間関係を構築し、前向きに思考し、アーティストとして、教師として必要とされる人材であり続けるために努力する姿だった。

「互いに思いやり、強い信頼関係で結ばれています。そして、究極のいい人になることが彼らの生きる武器であり、2人が圧倒的に楽しそうに、幸せに生きることで周囲を説得したんですね。私は取材中、彼らと暮らしましたが、ゲイのイメージ、例えば社会の差別と闘うとか、どちらかが女性役であるなどとは随分違っていたのも驚きでした。学生時代から彼らがゲイだとは知っていましたが、至って普通で自立した大人の男性が2人いるとしか見えない。日本の草食系男子の方がよほど女性っぽいですよ」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも