話題作「アクト・オブ・キリング」のバート2「ルック・オブ・サイレンス」
1965年のインドネシア大虐殺を追って話題になったドキュメンタリー「アクト・オブ・キリング」。その“パート2”が現在公開中で、再び評判を呼んでいる。ジョシュア・オッペンハイマー監督の「ルック・オブ・サイレンス」。
前作はスカルノ政権下のクーデターに始まった共産主義者狩りで虐殺を実行した面々に迫り、喜々として惨殺の模様を語る姿を捉えて驚かせた。
今回は逆に虐殺された側の遺族に寄り添い、加害者に向かって「ぼくの兄はあなたに殺されました」と語りかけるさまを見せるのだ。
最初は監督も普通のドキュメンタリーのように加害者と被害者を一作の中で見比べる構成を考えていたらしい。
だが取材の過程で相手の語りがみずからふくらんで、加被双方をそれぞれ扱う2部作になったのだという。
普通こういう状態は、社会学でいうラポール(信頼関係)が取材する側とされる側の間に生まれた場合だが、映画を見るとむしろ取材される加害者と被害者それぞれの「当事者」意識の食い違いが2部作の対照をきわだたせたのではないかと思う。