「宵待草 夜情」連城三紀彦著

公開日: 更新日:

 国文学者の「私」は、銀座の工事現場から明治初期の人骨の一部が発見されたニュースを聞き、明治22年に殺された能楽師・藤生貢のものではないかと思う。藤生流は正史には登場せず、貢の父・伸雅を援助していた伯爵の回顧録に、欧州で暮らしていた伯爵の5年ぶりの帰国の祝いの席で亡き父の遺志を継いだ貢が「井筒」を舞ったことが記されているだけだ。

 貢はその宴の3日後に失踪し、10日後に変死体となって発見された。当時の新聞によると、伸雅の後妻・篠が、当時16歳だった貢を殺害し、その遺体を切り刻んで自宅近辺の桜の木の根元に埋めたとある。(「能師の妻」)

 2年前亡くなった著者の傑作ミステリー5作品集。(角川春樹事務所 700円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  2. 2

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  3. 3

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  5. 5

    巨人大ピンチ! 有原航平争奪戦は苦戦必至で投手補強「全敗」危機

  1. 6

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 7

    衝撃の新事実!「公文書に佐川氏のメールはない」と財務省が赤木雅子さんに説明

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    高市首相が漫画セリフ引用し《いいから黙って全部俺に投資しろ!》 金融会合での“進撃のサナエ”に海外ドン引き

  5. 10

    日本ハムはシブチン球団から完全脱却!エスコン移転でカネも勝利もフトコロに…契約更改は大盤振る舞い連発