「コーヒーにドーナツ盤、黒いニットのタイ。」片岡義男著

公開日: 更新日:

 大学卒業後、3カ月の会社員生活を経てフリーランスのライター生活に入り、1974年に作家としてデビューした著者。本書は、作家デビューするまでライターとして過ごした日々を、その時々に流れていた音楽と共に仕立てた自伝的小説だ。

 60年に喫茶店で知り合った大学生との映画談議に登場した「リオ・ブラボー」の映画とディーン・マーチンの歌、会社をすぐ辞めることにした63年に聴いた「チュニジアの夜」、ビートルズ来日記者会見の席に出られずに神保町で原稿を書いた66年、アーサー・フィードラーのボストン・ポップス・オーケストラによる「ペルシャの市場にて」の旋律が流れる文具売り場で、楽しく美しい本をまだ一冊も作っていないと気づいて愕然とした68年……。

 原稿用紙と鉛筆を手に、音楽と共に過ごした日々が語られていく。その語り口は軽くフィクションのようでもあり、CDもインターネット配信もなかったドーナツ盤の時代の空気が全編に満ちている。(光文社 2000円+税)


【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    高市政権マッ青! 連立の“急所”維新「藤田ショック」は幕引き不能…橋下徹氏の“連続口撃”が追い打ち

  4. 4

    YouTuber「はらぺこツインズ」は"即入院"に"激変"のギャル曽根…大食いタレントの健康被害と需要

  5. 5

    クマと遭遇しない安全な紅葉スポットはどこにある? 人気の観光イベントも続々中止

  1. 6

    和田アキ子が明かした「57年間給料制」の内訳と若手タレントたちが仰天した“特別待遇”列伝

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲

  4. 9

    「渡鬼」降板、病魔と闘った山岡久乃

  5. 10

    元大食い女王・赤阪尊子さん 還暦を越えて“食欲”に変化が