「1980年代」斎藤美奈子、成田龍一編著

公開日: 更新日:

 政治経済から社会や思想や文化まで、1980年代の事象をさまざまな切り口から読み解いたアンソロジー集。

 バブル期として語られることの多い80年代は、旧来の戦後思想とは明らかに異なる「戦後の転換点」であり、今の時代の源流であった。サヨク、ニューアカ、おたく、フェミニズム、サブカルチャー、中曽根政権、教育改革、マンガ等、この時代を席巻した事象について、鼎談・論考・コラムなどを通して多角的に問い直していく。

 興味深いのは、高橋源一郎と編著者が選んだ80年代の文学を巡る鼎談。高橋氏は80年代を批評家が文学を論じた最後の時代と指摘。戦後文学が袋小路に入る一方で、吉本ばなな「キッチン」や村上龍「コインロッカー・ベイビーズ」に見られる家族の不在、田中康夫「なんとなく、クリスタル」や村上春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」に見られるモノへの固執など、既存路線とは全く違う文学が登場した時代を解説している。(河出書房新社 1800円+税)


【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  4. 4

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  5. 5

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  1. 6

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 7

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  3. 8

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  4. 9

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ

  5. 10

    官邸幹部「核保有」発言不問の不気味な“魂胆” 高市政権の姑息な軍国化は年明けに暴走する