著者のコラム一覧
坂崎重盛編集者、エッセイスト

1942年、東京都生まれ。編集者、エッセイスト。千葉大学造園学科で造園学と風景計画を専攻。著書に、「東京煮込み横丁評判記」「『絵のある』岩波文庫への招待」「粋人粋筆探訪」など多数。BSジャパンの「酒とつまみと男と女」に出演し、不良隠居として人気に。

「今夜はコの字で」原作・加藤ジャンプ 画・土山しげる

公開日: 更新日:

コの字カウンターのある酒場をひたすら巡り歩く

 世の中には、まったく新しい視点で物事を発見し、ウキウキとそれを探求する人間がいる。

 この本の原作者・加藤ジャンプ氏は(多分)世界で唯一無二の“コの字酒場探検家”で、「コの字酒場はワンダーランド」「コの字酒場案内」といった著者を持つ。

 キーワードは、もちろん“コの字”、つまりコの字形をしたカウンターのある酒場をひたすら巡り歩き、杯を干すのを生きがいにしてきたような人物なのだ。

 指摘されてみれば、(そうなんですよねえ)と納得がいくのだ。たしかに、コの字カウンターの酒場はいい。たいていは下町か古町の横丁や路地の一角にあって、客も常連か老舗居酒屋好きの面々が集まる店。

 値段も良心的で店も客も、エグゼクティブなどという舌をかみそうなムードなどありえようがない。出される酒肴もその店それぞれ、一本筋が通っている安心と信頼の庶民派飲み屋。先月未、刊行されたこの本書も選り抜きのコの字居酒屋が、土山しげるのリアルな漫画によって紹介される。

 おお! 第1話は神楽坂の「焼鳥しょうちゃん」ではないですか。たしかに、ここの鳥皮はコリコリ香ばしく絶品。ちょっとごぶさたしているが、ワンタンスープも美味で胃に優しい。

 第2話が錦糸町「三四郎」。かつてロシアンパブで話題となった錦糸町だが、ラブホ街はまだタフに生き残っている。そんな界隈の少し駅寄りにある「三四郎」、著者のコラムにあるとおり白木のカウンターを見れば、一目瞭然、心くばりの行き届いた居酒屋とわかる。ただし、開店早々満席、ということも少なくないので要注意。

 他に横浜のんきや」、自由が丘「ほさかや」、町田「酒蔵 初孫」など9店9話を収録。

 著者は1971年、東京生まれ。一橋大学法学部、同大学院修了。こういう御仁がいるから、日本もまだ捨てたものではない。(集英社インターナショナル 1000円+税)


【連載】舌調べの本棚

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    マエケンは「田中将大を反面教師に」…巨人とヤクルトを蹴って楽天入りの深層

  3. 3

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 4

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  5. 5

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  1. 6

    陰謀論もここまで? 美智子上皇后様をめぐりXで怪しい主張相次ぐ

  2. 7

    白木彩奈は“あの頃のガッキー”にも通じる輝きを放つ

  3. 8

    渋野日向子の今季米ツアー獲得賞金「約6933万円」の衝撃…23試合でトップ10入りたった1回

  4. 9

    12.2保険証全面切り替えで「いったん10割負担」が激増! 血税溶かすマイナトラブル“無間地獄”の愚

  5. 10

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?