「眩 くらら」朝井まかて著

公開日: 更新日:

 葛飾北斎の娘、葛飾応為ことお栄が主人公。父と同じく、幼い頃から絵筆を持ってさえいれば幸せだったお栄だが、縁談を勧める母のしつこさに負けて同じ絵師に嫁ぐ。しかし、家事など一切無頓着なお栄は事あるごとに亭主と衝突、ついに愛想を尽かして実家に戻ってしまう。母の嫌みもどこ吹く風、ひたすら絵に没頭していく。北斎の右腕として春画から風景画までこなしてきたお栄だが、どこかで「親父どの」から離れて独自の絵を求めるようになっていた。

 折から長崎のシーボルトから西洋画の依頼が舞い込む。西洋画の遠近法、陰影の付け方に新しい絵のヒントを受けるが、なかなか思うようにいかない。そんな彼女の悩みを理解してくれるのは、浮世絵師で戯作者の渓斎英泉こと善次郎。善次郎への思いを隠しながら己の絵を目指すお栄だが、父の病気、母の死、甥っ子の放蕩と難題が次々と襲ってくる――。

 父の血を受け継ぎつつも、レンブラントを彷彿させる名画「吉原格子先之図」を生み出すに至る天才女絵師の奔放な生涯を鮮やかに描き出す力作。(新潮社 1700円+税)



【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  3. 3

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  4. 4

    片山さつき財務相の居直り開催を逆手に…高市首相「大臣規範」見直しで“パーティー解禁”の支離滅裂

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  1. 6

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  2. 7

    森田望智は苦節15年の苦労人 “ワキ毛の女王”経てブレーク…アラサーで「朝ドラ女優」抜擢のワケ

  3. 8

    臨時国会きょう閉会…維新「改革のセンターピン」定数削減頓挫、連立の“絶対条件”総崩れで手柄ゼロ

  4. 9

    阪神・佐藤輝明をドジャースが「囲い込み」か…山本由伸や朗希と関係深い広告代理店の影も見え隠れ

  5. 10

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲