佐々木寛
著者のコラム一覧
佐々木寛

1966年生まれ。専門は、平和研究、現代政治理論。著書(共著)に「市民社会論」「『3・11』後の平和学」「地方自治体の安全保障」など多数。現在、約900キロワットの市民発電所を運営する「おらってにいがた市民エネルギー協議会」代表理事、参院選新潟選挙区で野党統一候補を勝利に導いた「市民連合@新潟」の共同代表。

エネルギー新時代の「常識」

公開日: 更新日:

「再生可能エネルギー100%時代の到来」和田武著(あけび書房1400円)

「再生可能エネルギー100%社会」。エネルギー問題に多少は詳しい(と自分では思っている)人ほど、まずそんなことは「非常識」だと思うかもしれない。

 この国では、「原子力ムラ」「安全保障ムラ」などのさまざまな「ムラの常識」が支配していて、そこから逸脱する議論はハナから相手にされない。しかし、その「常識」の信奉者たちの多くは、世界には他にもたくさんの「常識」があるという「常識」を理解できない。それゆえ、新時代の「常識」は、常にムラの外の住人に聞くしかないということになる。

 本書の著者も、元はムラの住人だった。しかし、そこから抜け出して新しい「常識」を見いだし、訴え続けてきた。このように“転生”した人の言葉は聞くに値する。近い将来、再生可能エネルギーは間違いなく安価なエネルギーになる。デンマークは2050年までに再生可能エネルギーを100%、ドイツは電力の80%以上にする計画である。パラグアイはすでに3年前に149%を達成している。このような再生可能エネルギー中心のエネルギー政策は、一部地域の例外ではない。気候変動問題や経済雇用問題、安全平和問題をリアルに見据えた上で到達した、世界の趨勢となりつつある。

 本書によれば、このエネルギー社会のパラダイムシフトを支える主役は、政府や大手企業というより、そのあり方を決める市民や自治体である。これからのエネルギー社会は、中央集権型=大規模依存型から、地域分散型=小規模自律型へと移行する。一国のエネルギー政策も、ドイツの「100%再生可能エネルギー地域」プロジェクトのように、それぞれの地域の事情に見合ったミクロな実践が基盤となるだろう。

 04年まで太陽光発電の普及量が世界一だった日本、そして世界有数の豊かな再生可能エネルギー資源を誇る日本が、今なぜ世界とは真逆の道を歩んでいるのか。本書は小著だが、このような最重要の争点を包括的に取り上げ、新時代の「常識」を分かりやすく提示する。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

人気キーワード

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大坂なおみ正念場…辣腕コーチとの契約終了は「愛想を尽かされた」ということ

    大坂なおみ正念場…辣腕コーチとの契約終了は「愛想を尽かされた」ということ

  2. 2
    「アイデア泥棒ではないか」就活生から企業に向けて怒りや不満の声が漏れるワケ

    「アイデア泥棒ではないか」就活生から企業に向けて怒りや不満の声が漏れるワケ

  3. 3
    旧統一教会・田中会長“言い訳会見”に重大なウソ 会見弁護団・国民生活センターが次々指摘

    旧統一教会・田中会長“言い訳会見”に重大なウソ 会見弁護団・国民生活センターが次々指摘

  4. 4
    佳子さまに“間違いないお相手”とのお忍び愛報道 眞子さんと「同じ選択」なら秋篠宮家どうなる

    佳子さまに“間違いないお相手”とのお忍び愛報道 眞子さんと「同じ選択」なら秋篠宮家どうなる

  5. 5
    原監督が巨人の“聖域”をブチ壊し…よりによって中田翔が「第91代4番」の衝撃

    原監督が巨人の“聖域”をブチ壊し…よりによって中田翔が「第91代4番」の衝撃

  1. 6
    「反日のエセ保守」である安倍政権で一貫していた「日本を破壊する」という強い意志

    「反日のエセ保守」である安倍政権で一貫していた「日本を破壊する」という強い意志

  2. 7
    岸田首相と旧統一教会関係者の2ショット写真拡散!内閣改造をブチ壊す“脇の甘さ”に不安の声

    岸田首相と旧統一教会関係者の2ショット写真拡散!内閣改造をブチ壊す“脇の甘さ”に不安の声

  3. 8
    キムタクは「おじさん構文」にピリピリ? インスタからすっかり絵文字が消えたナゼ

    キムタクは「おじさん構文」にピリピリ? インスタからすっかり絵文字が消えたナゼ

  4. 9
    旧統一教会と接点ある副大臣・政務官は20人! カミングアウトしていない「3人の名前」

    旧統一教会と接点ある副大臣・政務官は20人! カミングアウトしていない「3人の名前」

  5. 10
    山際経済再生相 内閣改造前は旧統一教会との癒着“完黙”→留任後カミングアウトの超悪質

    山際経済再生相 内閣改造前は旧統一教会との癒着“完黙”→留任後カミングアウトの超悪質