著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「暗殺者の反撃(上・下)」マーク・グリーニー著、伏見威蕃訳

公開日: 更新日:

 コート・ジェントリーを主人公にしたシリーズの第5作だが、「見つけ次第射殺」というCIA指令はなぜ出されたのか、その謎がついに解明される長編である。

 このジェントリー・シリーズは、1作ずつ独立しているのでどこから読んでも面白く、続けて読めばもっと面白い冒険小説である、ということを最初にお断りしておきたい。だからこれまでの4作を未読の方でも大丈夫。いきなりこれを読まれたい。

 世界中を逃げ回っていたジェントリーが今回はアメリカに帰国する。CIA指令を出した張本人、国家秘密本部の本部長カーマイケルを問い詰めるためだ。もちろん危険は承知のうえだ。それを知ったカーマイケルはCIA局員だけでなく、なんとサウジアラビア統合情報統括部のアメリカ支局長カザズにジェントリー抹殺を依頼する。アメリカ国内でサウジアラビア情報部員の違法活動を認めるのだから、カーマイケルも追い詰められている。

 なぜそれほどまでにジェントリーを抹殺しなければならないのか。謎はどんどん深まっていく。

 とにかくアクションの切れが半端じゃないのだ。手に汗握ることは必至。全編に緊迫感がみなぎっているのはディテールがいいからで、ハラハラドキドキがこれほど長く続くのも珍しい。特に、ラストが圧巻。死地に赴くジェントリーは果たして生還できるのか。そのあとの死闘をたっぷりと堪能していただきたい。(早川書房 各920円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  2. 2

    自維連立に透ける実現不能の“空手形”…維新が「絶対条件」と拘る議員定数削減にもウラがある

  3. 3

    自維連立が秒読みで「橋下徹大臣」爆誕説が急浮上…維新は閣内協力でも深刻人材難

  4. 4

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  5. 5

    ラウールが通う“試験ナシ”でも超ハイレベルな早稲田大の人間科学部eスクールとは?

  1. 6

    ポンコツ自民のシンボル! お騒がせ女性議員3人衆が“炎上爆弾”連発…「貧すれば鈍す」の末期ぶりが露呈

  2. 7

    日本ハム1位・伊藤大海 北海道の漁師町で育った泣き虫小僧

  3. 8

    米倉涼子の薬物逮捕は考えにくいが…業界が一斉に彼女から手を引き始めた

  4. 9

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  5. 10

    影山雅永JFA技術委員長の“児童ポルノ逮捕”で「森保監督がホッとしている情報」の深層